「成長の核が見えない」パナソニック、新体制で巨艦は再成長できるか?

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記者会見で握手する楠見次期社長(右)と津賀社長(13日=大阪市内)

パナソニックが2022年4月、持ち株会社制へ移行する。津賀一宏社長が進めてきた構造改革を継承し、各事業部の意思決定を迅速化。外部環境の変化に合わせて一段のポートフォリオ改革を進める。プラズマテレビ事業の撤退などに携わった楠見雄規常務執行役員を次期社長として「未知なる未来」を託す。新型コロナウイルス感染症拡大の逆風が吹き荒れる中、巨艦を再成長軌道に乗せられるか。かじ取りは難航が予想される。

13日、ホテルニューオータニ大阪(大阪市中央区)。社長就任会見と同じ場で津賀社長は交代会見に臨んだ。在任8年半を振り返り「もっと単純に収益を伴う成長をやりたかった」と悔しさをにじませつつも、持ち株会社化に「ふさわしいとの手触り感と自信を持てた」と力を込めた。

津賀経営の本質は、古くて大きいパナソニックの集団経営の仕組みを再構築し、会社全体を“見える化”したことにある。事業部制、カンパニー制などたびたび大規模な組織改編に踏み切り“改革疲れ”が指摘されつつも、結果として12年の就任以来、プラズマ・液晶事業撤退や半導体事業売却につながり、各ビジネスユニットの自主責任経営が根付いた。

楠見氏はプラズマ撤退やトヨタ自動車との電池事業の合弁会社設立などの重要案件に関わり、津賀経営を肌で感じてきた。新型コロナ禍での2020年7―9月期連結決算では「再挑戦事業」に位置付けられた車載事業を黒字転換し、社内外に存在感を示した。

ただ、改革を続けているとはいえ、パナソニックの成長が加速しているとは言いがたい。津賀社長就任前の12年3月期に7兆8462億円だった売上高は、20年3月期でも7兆4906億円。ある証券アナリストは20年7―9月期の連結決算発表直後、車載の好調さを評価しつつも「全体戦略は依然として不明瞭」とコメント。市場の評価も芳しくない。

持ち株会社化で低成長を打破できるのか。現在七つあるカンパニー制を廃止し「パナソニックホールディングス(HD)」の傘下に各事業会社を設置。白物家電、空調、電気設備などの事業を集約し「パナソニック」の社名を引き継ぐ。

楠見氏はまだ具体的な方針は出せないとしつつも「各事業会社が生き残りをかけて、自らの競争力をどう高めるか。持ち株会社がそれをどう支援するか」と、パナソニックHDのトップとしてのあり方を示す。

ここ数年「成長の核となる事業が見えない」という声がよく聞かれるが、経営陣は明確な答えを示せていない。見方を変えると、パナソニック全体では明確に示すことができなくても、分社化した各事業で成長できるのであれば十分ではないか、とも考えられる。

会見の場では、表情は比較的穏やかだった楠見氏。だがこれからは成長という結果を示すことが求められる。ある意味で津賀社長時代よりも、周囲からの評価がシビアになる。背水の陣で経営に臨むことになるだろう。

日刊工業新聞2020年11月16日

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