「頭は切れるが、遠慮がない」。パナソニック新社長の楠見さんはどんな人?
パナソニックは次期社長に、車載事業を担当する楠見雄規常務執行役員(55)を内定した。2021年4月に最高経営責任者(CEO)となった後、同6月24日の株主総会を経て社長に就任する。22年4月には持ち株会社制に移行し、社名を「パナソニックホールディングス」に変更する。各事業が自立して迅速に意思決定する体制をつくり、新たな成長軌道を目指す。
楠見氏は研究開発部門出身で、テレビ事業などを担当。現在は車載事業のトップを務める。13日に大阪市内で記者会見した楠見氏は、「まだまだ低収益の事業がある。競争力を徹底的に強化することが必要だ」と語った。
これまで構造改革を続けてきた津賀一宏社長(64)は、代表権のない会長に就任。長栄周作会長(70)は特別顧問に就任する。
【略歴】楠見雄規氏 89年京大院工応用システム科学専攻修了、同年松下電器産業(現パナソニック)入社。14年役員、19年常務執行役員。奈良県出身。
遠慮なく、意見してもらえる風土を
入社後、津賀一宏社長と同じ研究所に所属し、エンジニアとしてテレビやレコーダーなどの開発に取り組んだ。「開発したテレビの『dボタン』機能が店頭で紹介されるのを見て涙した」という。
欧州の研究開発拠点の所長などを歴任後、テレビ事業の責任者としてプラズマテレビ事業の撤退も進めた。
18年に家電を離れ、二次電池事業に「電撃移籍」。戸惑いもあったようだが、津賀社長には「事業が思考停止に陥らないためのカンフル剤」との狙いがあった。
期待に応え、角形電池事業ではトヨタ自動車との協業を主導、車載機器の収益改善でも成果を出した。津賀社長は「短時間で本質的な課題を見いだし、現場に密着して改革できる」と評価する。
「頭は切れるが、遠慮がない」との社内評もある。「まずは皆さんに遠慮なく、意見してもらえる風土をつくりたい」との心構えで経営に臨む。
休日はサイクリングも楽しむ。
日刊工業新聞2020年11月16日