防衛省が次期戦闘機開発を三菱重工に発注、メリットと課題
防衛省は航空自衛隊の「F2」後継となる次期戦闘機の開発を、三菱重工業に正式発注した。今回の契約はF2の時と異なるシングル・プライム方式で、機体を担当する三菱重工がエンジンを担当する企業やアビオニクスを担当する企業も下請けとして束ねて主導するする。
単独契約にすることで、日本主導イメージをより強く打ち出すとともに、将来の機体改修も自由度を保つ狙いがある。ただ、実現には多くの課題が横たわる。戦闘機開発は実際は米英企業などと共同作業になるとみられるが、武器輸出管理規則や第三者非開示の問題をどうするのか。「F2」の時のように、米国が重要軍事技術をブラックボックス化し開示を拒んだ場合、独自開発できるのか。米大統領選挙の行方も含め、まだ目が離せない。
1社との主契約方式にすることで、戦闘機システム全体のインテグレーション強化が期待できる。現在の「F2」では防衛省は機体インテグレーションが三菱重工、エンジンが米ゼネラル・エレクトリック(GE)、レーダーや管制装置は三菱電機などと、部門ごとに担当企業と直接契約する形を採用している。今回は米ロッキード・マーチンや米ボーイングも、三菱重工の下請け企業になる。エンジンに関しては、エンジン単独で完結する開発作業について、防衛省はエンジン担当企業と直接契約する方針だ。
新世代の次期戦闘機は機体・エンジン・アビオニクス間の高度な連携が不可欠で、途中で不具合が生じても別々の契約だと航空自衛隊のニーズを的確に反映させることが難しいため、シングル・プライム方式になった。航空自衛隊が求める理想の戦闘機イメージの実現に、関係者が一丸となって開発を進められる体制が整う。
日刊工業新聞2020年11月2日の記事に加筆