ボーイングが「MRJ」に示した“上下関係”

ティア1、三菱重工の名前を先に出す

 航空機業界の雄、米ボーイングと欧州エアバスの競争が、新たな段階を迎えている。エアバスがカナダ・ボンバルディアの小型機事業を買収したことを引き金に、ボーイングがブラジル・エンブラエルの小型機事業の買収を決定。新興国を中心に需要拡大が見込める座席数150席以下の小型機市場の取り込みに動いた。大手2社による寡占化が進み、三菱航空機(愛知県豊山町)の国産小型ジェット旅客機「MRJ」にも影響が出かねない。

 英ロンドン郊外で開催中の航空宇宙産業展「ファンボロー国際航空ショー」で、大手2社は買収劇の成果を強調する演出に出た。

 2017年10月にボンバルディアの小型機事業「Cシリーズ」の買収を発表し、先に動いたエアバス。買収完了の証として、今月には自社の製品シリーズ「A220」に衣替えした。ファンボローに実機を持ち込み、内部公開イベントを開いたほか、飛行展示も実施した。

 エアバスに触発されたボーイングは、エンブラエルと小型機事業の買収の交渉に入ったことを17年12月に発表すると、今月上旬には買収を決め、ボーイングが8割出資する新会社の設立で合意した。

 ファンボロー国際航空ショーでは、ボーイングのデニス・マレンバーグ最高経営責任者(CEO)と、エンブラエルのパウロ・シルバCEOが登壇し、蜜月を強調するイベントを実施した。マレンバーグ氏は「ボーイングの長い歴史の中でも重要なパートナーだ」とエンブラエルを持ち上げ、シルバ氏は「我々はリージョナルジェット市場で50年間挑戦してきたリーダーだ」と自信を見せた。

 MRJは小型機の中でも、座席数100席未満のリージョナルジェットで、エンブラエルは三菱航空機の最大の競合だ。三菱航空機はボーイングとMRJのカスタマーサポート契約を結んでいる。

 マレンバーグ氏は同イベントでそれを問われると、「三菱重工業との関係は変わらない」と友好関係を強調。MRJのカスタマーサポートを続ける意向も示した。

 三菱重工はボーイングのティア1として機体製造を担っており、長年の盟友だ。MRJではなく、三菱重工の名前を先に出したことは、ティア1としての関係が最優先だという意識を感じた。エンブラエルを傘下に収めることで、MRJをどこまで支援するべきか検討していてもおかしくない。

日刊工業新聞 記者

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07月21日
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 三菱航空機の水谷久和社長はボーイングのエンブラエル買収の影響について、「ボーイングにはカスタマーサポートで協力していただく。それは今後も変わらない。三菱重工業全体では、民間航空機のティア1として長年友好関係を築いている。今後も持続すると聞いている。両社の提携の細部については言及はまだない。非常に関心を持って注視している。我々としては、2020年半ばの初号機納入というスケジュール通りに仕上げることだ」と話す。また座席数100席級の「MRJ」開発構想については、「両社の提携の議論でも、100席級は大きな話題になると考えている。ただ、いまはまず『90』、次に『70』を開発するのが正直なところで、100席級の具体的な方向性を考える段階ではない」という。
(日刊工業新聞名古屋支社・戸村智幸)

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