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低コストかつ修理も容易! 車用エンジンが排水機場ポンプの動力に

国土交通省は大雨による市街地の水害を防ぐために雨水を河川に排水する排水機場のポンプの動力源を、現在の舶用エンジンを改造した一品仕様から、量産品の車用エンジンを複数台使用するシステムに転換する方針を固めた。コストが最大10分の1に下がるほか、水害が頻発化する中でエンジンが水没し故障するリスクを大幅に減らす。このため11月上旬にマスプロダクツ型排水ポンプ技術研究会を立ち上げ、2021年度の実証実験を経て早期の実用化を目指す。

国交省が管理する排水機場は全国に444カ所ある。ポンプの動力には大出力の舶用ディーゼルエンジンを一品ごとに設計、改造して使っている。1基当たりの価格は約7500万円。排水量が毎秒1トンの機場を作るのに2億―4億円が必要だ。2―3割は設置後40年を経過して老朽化しているが、メンテナンス要員の確保や補修部品の入手が難しくなっている。「令和2年7月豪雨」で水没したエンジンでは、新たに製造し据え付けるのに10カ月かかる見込みだ。

これに対し汎用品の車用エンジンは1基100万―200万円程度で、ほぼ無改造で使用できる。舶用エンジンを2基使用している機場では、予備機1基を含め車用11基への切り替えを検討、故障時にも即座に予備機に切り替えを可能にする。1基当たりの大きさも約50分の1で、排水量や揚程(ようてい)(くみ上げ高さ)に応じて柔軟なシステムが設計できる。エンジンは故障しても自動車修理工場で修理でき、補修部品も長年確保できる。トータルコストは最大で10分の1を目指している。

10年後には設置後40年を超えるポンプ場が4―5割と一斉に老朽化する。技術研究会ではポンプやエンジン、樹脂配管などの研究開発を行う企業・団体がオープンな議論を行い、最適な仕様を検討する。「甚大な水害が増える中、故障リスクを減らすことが重要」(国交省総合政策局)とし、機場が水没しても機器は運転し続けるシステム構築を目指す。

日刊工業新聞2020年10月28日

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