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神経に直接まく新発想のシート治療、どんな手術患者が対象?

大阪大学・NIMS・日本臓器製薬などが発表
神経に直接まく新発想のシート治療、どんな手術患者が対象?

神経にシートを巻き付ける(手術イメージ)

大阪大学と物質・材料研究機構(NIMS)、日本臓器製薬は22日、炎症や損傷のある末梢(まっしょう)神経に直接巻いて再生を促す「HANZ(ハンズ)シート」の治験を11月から始めると発表した。手首の神経が圧迫される「手根管症候群」や神経の切断など、末梢神経の手術が必要な患者を対象とする。安全性と効果を評価した後、多数の患者の治験に進み、早期の実用化を目指す。将来は年5万件の手術で利用を見込む。

同シートは直径が数百ナノメートル(ナノは10億分の1)の繊維による極薄の不織布。柔軟で神経を傷つけない。含有した薬剤を長期間にわたり一定速度で放出するほか、栄養は取り入れながら患部を炎症の原因となる刺激から守る。薬剤と保護の効果で末梢神経の再生能力を高める。

水分を含ませ粘着性を高めた後、神経の状態や形状により巻き付けや貼り付けの処置をする。約1年半かけて生体内で無害に分解されるため長期の治療が可能で除去が不要だ。

日本臓器製薬による量産技術の確立で、実用化ができるとして治験に進んだ。今回の治験は22年6月まで複数の医療機関で行う。手根管症候群の圧迫を取り除く手術27例と、手の神経の縫合手術6例の計33例を予定。

日刊工業新聞2020年10月23日

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