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理想の肉を“デザイン”、再生医療ベンチャーが培養肉開発に乗り出す理由

理想の肉を“デザイン”、再生医療ベンチャーが培養肉開発に乗り出す理由

ティシューバイネットが試作した5センチメートル角の培養肉

ティシューバイネット(東京都北区、大野次郎社長)は、再生医療のコスト削減を狙って培養肉の開発に乗り出す。日本料理店の雲鶴(大阪市北区)と共同開発するもので、細胞を結合させる独自技術「ネットモールド」技術を使い、牛肉や鶏肉を作製する。2021年初旬に試食会の開催を予定。食品への応用によって同技術の生産性向上とコストダウンを実現し、再生医療に活用する計画だ。

ティシューバイネットでは、すでに5センチメートル角の培養肉の試作に成功している。ネットモールド技術では牛や鳥の細胞を、網を組み合わせた鋳型の中に入れ、培養液につける。型の中で細胞が結合し、より自然な細胞組織になるのが特徴。複数種の細胞を一つの塊に組織化することもできる。

そのため塊にする細胞の組み合わせによって食感や味を変えることができる。例えば淡泊な味にしたい場合は脂肪分が少ない細胞を結合させるなどといった制御が可能という。完全無菌で培養するため食中毒リスクもほぼなく、常温保存や長期保存ができる可能性もある。さらに元になる細胞を採取すれば培養できるため、動物を殺す必要もない。

大野社長は「再生医療のベースとなる。大量に培養する技術を確立できればコストが下がり、再生医療の治療費を飛躍的に下げられる」と話す。

できあがった肉は雲鶴の島村雅晴料理長が評価し、改善につなげる。自身の料理に合わせた、理想の肉を“デザイン”する。

ティシューバイネットは培養肉の開発に当たって、子会社のダイバースファーム(大阪市北区)を設立。雲鶴との協業による食品事業を足掛かりに、グループとして医療業界参入を目指す。

日刊工業新聞2020年10月22日

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