スタートアップと製造業を繋ぐVC、きっかけはシリコンバレーで見た日本のITベンチャーの不遇

Monozukuri Ventures社長・牧野成将氏が語る

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シリコンバレーでのスタートアップのプレゼン最終発表会。サンブリッジ グループCEOのアレン・マイナー氏(中央)は「モノづくりと投資を組み合わせた世界でも見たことがないVCだね」と後押ししてくれた(15年8月、サンフランシスコ市のフォート・メイソン・センターにて筆者撮影)

新興企業投資・試作支援を連係

私は製造業に特化したベンチャーキャピタルを2015年から運営している。京都と米ニューヨークを拠点に、モノづくりスタートアップへの投資と、日本の製造業ネットワークを使った試作開発を支援している。

製造業に特化したベンチャーキャピタルは、世界的に見ても、まれな存在だが、既に30社以上を支援している。中には大手メーカーとの協業などを通じて、急成長を遂げた投資先もある。

なぜ製造業に特化しようと思ったのか、それは13年前にさかのぼる。当時、日本では「ヒルズ族」と呼ばれるような新興IT企業が台頭していたが、海外に進出しても、国内のような結果が出せずに撤退するケースが相次いでいた。

グーグルやフェイスブックがグローバルITベンチャーとして急成長しているのに、日本のITベンチャーはなぜ結果が出せないのだろう。当時、京都の大手ベンチャーキャピタルに入社したばかりの私は、その理由を自分の目で確かめるべく、会社を休んで自費でシリコンバレーに飛んだ。そこで見たのは、目を覆いたくなるような事実だった。日本のIT企業がシリコンバレーのコミュニティーに入り込めず、完全に蚊帳の外に追いやられていた。

日本からスタートアップを連れて、現地の投資家に紹介しても全く興味を持ってもらえなかった。日本はバッシングされるどころか、彼らの視野にすら入っていなかった。国内にいては知ることのなかった日本の姿がそこにはあった。

しかし、米国の投資家やベンチャーが日本に対して、唯一評価していたものがあった。それが製造業の技術力だった。京都には時価総額1兆円を超える製造業大手を頂点に、優れた技術を持った中小企業のサプライチェーンがある。一方でベンチャー企業にはモノを作るノウハウや、品質を上げるための知見が少ないため、工場とのやりとりに苦労していることを知った。この両者をつなぐことができれば、シリコンバレーだけでなく、世界中に日本の存在感を再び示すことができると考えた。

こうして私は米国から帰国後、試作に特化した京都の中小企業ネットワークである「京都試作ネット」と組み、スタートアップへの投資と、試作開発を行う支援プログラムを提供する会社を15年に立ち上げた。スタートアップと製造業をつなげる試みは試練の連続だったが、あるプロジェクトでの成功をきっかけに、シリコンバレーで描いた仮説が実現に向かうことになった。

Monozukuri Ventures社長・牧野成将

◇Monozukuri Ventures社長・牧野成将
 フューチャーベンチャーキャピタルなど勤務を経て、11年サンブリッジにて「GVH Osaka」を立ち上げ。15年、ハードウエアスタートアップの試作支援を行うDarma Tech Labs(現Monozukuri Ventures)を創業。17年、ハードウエア/IoTスタートアップへの試作と投資の「MBC Shisakuファンド(20億円強)」設立。

日刊工業新聞2020年10月15日

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