コロナ禍がアジアのスタートアップに与えた良い影響、悪い影響

AEA2020がプレイベント

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AEA2020のプレイベントはオンラインで配信した

アジアの技術系スタートアップが社会課題の解決につながるビジネスアイデアを競うコンテスト「アジア・アントレプレナーシップ・アワード2020(AEA2020)」のプレイベントが8月7日、オンラインで開催された。コロナ禍による日本やアジアの大企業、スタートアップへの影響などについて議論した。オンライン開催は初の試みで、約400人が視聴した。

開会の挨拶をした各務茂夫AEA運営委員会委員長(東京大学教授)は、「今はスタートアップにとってチャンスが生まれているのではないか」と強調した。そのチャンスとして初診を含めたオンライン診療の解禁を例示し、コロナ禍に伴う規制緩和によってスタートアップが事業機会を得ていることを示唆した。各務委員長に続けて、日本貿易振興機構(JETRO)の小島英太郎アジア大洋州課長は、コロナ禍にチャンスを見いだしているアジアのスタートアップを紹介した。

一方、三井不動産の山下和則執行役員やTXアントレプレナーパートナーズ(TEP)の國土晋吾代表理事らが参加したトークセッションでは、TEPの國土代表理事がコロナ禍によってスタートアップが受けている悪影響を説明。「バリューチェーンが寸断されてモノが来なかったりといった理由で開発スピードが極端に落ちている」と強調した。

AEA2020は10月27-29日に行う。「ヘルスケア」や「コミュニケーション」「働き方」「QOL」に関わるサービスを持つスタートアップが参加し、事業の革新性や日本の大企業との連携の可能性などを審査基準にビジネスアイデアを競う。優勝者には賞金300万円が贈られる。AEAは2012年から開催され、これまでに15カ国・地域の181社が参加している。

■プレイベントの登壇者や主な発言は以下の通り。

AEA運営委員会 委員長 各務茂夫氏

スイスのビジネススクールIMDが(「経済状況」や「ビジネスの効率性」「インフラ」などを指標に算出し)公表している世界競争力ランキングにおいて、日本は(1992年まで)1位だったが、2019年は30位に落ち込んだ。

日本が低迷する中で、アジアは大きなポテンシャルを持つ。2050年にはアジアは世界全体のGDPの半分以上を占める。ユニコーン企業も2020年1月現在、世界で600社強だが、その半分弱がアジアの企業だ。アジアはコロナ禍でも経済のけん引役として位置づけられると思う。

(コロナ禍の)今はスタートアップにとってチャンスが生まれる時ではないかと考えている。例えば、岩盤規制と言われていたオンライン診療が、患者の立場を考え、また、医療崩壊を避けるために初診も含めて解禁された。

日本貿易振興機構 海外調査部 アジア大洋州課長 小島英太郎氏

コロナ禍にチャンスを見出し、ビジネスとして取り組むスタートアップが登場している。19年のAEAで優勝したシンガポールのAcumen Research Laboratoriesは、敗血症の診断機器が主力だが、最近はコロナの検査サービスを開始し、地元紙から高い評判を得た。

インドネシアのqlueは、人工知能(AI)やIoTを使ったモビリティーなどを得意としているが、コロナ禍で事業戦略を見直し、政府の新型コロナ感染拡大防止策を支援するビジネスモデルに切り替えた。インドのPractoは遠隔医療のアプリを提供し、アクセス数を伸ばしている。

三井不動産 執行役員 柏の葉街づくり推進部長 山下和則氏

コロナが収束した後にライフスタイルがどう変わるかを見据え、街づくりに反映しないといけない。デジタルトランスフォーメーション(DX)や国際化が進展し、人々の価値観も変わる。この変化がコロナをきっかけに加速度的に速くなっているという認識だ。

(我々は)多様なテクノロジーを活かしたスマートシティを作る。リアルな空間のデータをバーチャル空間で分析し、(その結果を)リアルに生かして価値を上げるといったハードとソフトの融合を行う。それにより、現在の様々な課題を街づくりで解決していきたい。スタートアップの知識やテクノロジーも活かして、人々が幸せになる舞台を作ることが我々のミッションだと思う。

凸版印刷 事業開発本部 戦略投資センター センター長 朝田大氏

(新型コロナウイルス感染拡大は我々の)業績にプラスマイナス両方の影響がある。例えば、電子書籍は巣ごもりで急増した。BtoBの営業には苦戦している。

(今後は)遠隔化、非接触、効率化、省人化が進んでいく。コロナ禍の2か月は2年のデジタル変化が起こったことも同然だ。5GやAIに対する対応が急務になる。リアルとデジタルをいかに融合させて確立するか。ノウハウを作り生産性を高める。医療・教育への活用・展開も考えていきたい。

日本マイクロソフト エバンジェリスト 西脇資哲氏

コロナの影響は大きかったが、我々はそれに対応する技術的な準備ができていた。(その一つとして)オンライン会議システムは03年から提供している。現在は(そうした知見を生かして)変化に対応する企業などを支援している。

内閣官房の新型コロナウイルス感染症対策推進室と(IT 技術の活用を拡大して新型コロナウイルス感染症の拡大防止対策を効率的に実施する)協定を締結したが、この締結業務はすべてテレワークで行った。(また、)3-4月は教育・新入社員研修などを支援した。例えば卒業式。リアルでは見ることのできないステージ上からの映像を家庭に届けることで、新しい形の式を提供することができた。

TXアントレプレナーパートナーズ 代表理事 國土晋吾氏

コロナ禍による技術系スタートアップへの影響として2つの問題点がある。1つは開発スピードが極端に遅くなっていること。大企業とのコミュニケーションが非常に難しい。オンラインだけでなく、実際に実験室でやるべきこともたくさんあるが、すべてストップしている。増員を延期したり、バリューチェーンが寸断されて物が来なかったりと様々な要因がある。

2つ目は先行きの不透明さだ。ベンチャーは通常18ヶ月くらいを見越して資金調達の計画を立てるが、コロナ禍でベンチャーキャピタルが慎重になっている。もしくはベンチャー向けのセーフティーネットが日本にないことが要因となっているかもしれない。

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