乗用車、機械、ロボット...産業界の下半期はどうなる?

下期を読む#1

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いすゞ自動車が9月に豪州へ投入した小型ピックアップ・トラックの新型「D-MAX」

2020年度も折り返しを迎えた。新型コロナウイルス感染症の影響からいち早く中国が復調する一方、欧米ではロックダウン(都市封鎖)再検討の動きが広がるなど、収束はいまだ見通せない。11月の米大統領選と米中貿易摩擦、英国の欧州連合(EU)離脱をめぐる通商交渉の行方にも関心が高まる。また、業界を問わず第5世代通信(5G)など情報通信技術(ICT)の取り組みも重要なテーマだ。各業界の下期の動向を探る。

【乗用車/新車販売 米中で復調】

世界の乗用車需要は新型コロナ拡大の影響を受けた4―6月期の低迷から、21年1―3月期にかけて回復傾向が続きそうだ。

けん引役は中国市場。地方政府の需要刺激策などで、新車販売台数は8月まで5カ月連続で前年同月を上回った。トヨタ自動車やホンダの販売は8月単月として過去最高を更新した。米国市場も4月を底に回復傾向が続く。調査会社マークラインズによると9月の新車販売は7カ月ぶりに増加した。

トヨタは世界販売の見通しを7―9月期が前年同期比約15%減、10―12月期が同約5%減、21年1―3月期は同約5%増と予測。7―8月の販売実績は予想を上回っており、「9月以降も引き続き回復傾向で伸びていく」(同社担当者)と想定する。一方、自動車部品メーカーの回復傾向には遅れも見られる。ある部品メーカー幹部は「完成車メーカーの需要動向から部品メーカーは1カ月程度遅れる」とし、国内で月に数日の非稼働日を設定しているという。

【商用車/主力の東南ア 足取り鈍く】

商用車の下期は地域差が見られそうだ。新型コロナの影響から中国などは徐々に回復傾向にあるが、国内メーカーの販売台数が多い東南アジア地域の先行きは不透明な状況だ。

インドネシアやフィリピンでは感染予防のため実施していた移動制限を10月中まで延長する動きもあり、経済回復が見通せない。「海外については下期も回復の足取りは鈍いだろう」と業界関係者は話す。海外市場での新型コロナのブレーキは年度をまたいで21年4月以降も続きそうだ。

一方、国内市場は新型コロナの影響が年度末までのようだ。関係者がまとめた普通トラック(積載量4トン以上の大型・中型トラック)の20年度上期(4―9月)の国内販売台数は前年同期比14・6%減だった。これは19年秋に実施された消費増税や、新規制適用前の駆け込み需要の反動が主な要因で「新型コロナの影響は一部だった」(関係者)。ただ観光バスについては観光需要の蒸発によりコロナ禍が直撃している。

【造船・エンジ/新造船 持ち直し弱く】

造船はコロナ禍が新造船の受注に大きな影響を与えており、下期も厳しい状況が続きそうだ。日本船舶輸出組合によると、8月の一般鋼船の契約が7カ月ぶりに前年同月を上回ったが、伸び率は5%弱にとどまった。持ち直しの動きが弱く、輸出船の手持ち工事量も安定操業の目安とされる2年分を大幅に下回る水準だ。今治造船(愛媛県今治市)の檜垣幸人社長は「(まとまった)量を建造しないと競争力を維持できない」と指摘する。

需要の変動が激しいエンジニアリングは、20年度に安定した受注を獲得するとされている。主に19年度に予定されていた海外の大型案件の成約がずれ込んだことが背景にある。

日揮ホールディングスは1日、イラク・バスラ製油所近代化プロジェクトについて現地企業と契約を締結した。千代田化工建設や東洋エンジニアリングは上期に国内製薬企業との協業やバイオマス発電所の受注を発表しており、今後国内案件も増えてきそうだ。

【工作機械/海外受注の改善継続】

工作機械の下期は米中対立激化や新型コロナの感染再拡大といったリスクを抱えながらも、受注環境は回復基調を続けそうだ。けん引役となるのは中国だ。

「中国ではインフラ投資や新型スマートフォン製造、新車販売の持ち直しなどで景況が改善しつつある」。日本工作機械工業会(日工会)の飯村幸生会長は前向きに捉える。

日工会によると、8月の中国向け受注額は170億円。一般機械向けと電機・精密向けが大幅に伸び、3カ月連続で前年同月を上回った。DMG森精機の森雅彦社長は「中国の回復は著しく、天津工場は来年3月まで受注残ですべて埋まっている」と強調する。

牧野フライス製作所は、8月の受注実績について「中国はほぼ前年同月並みに戻ってきている」(業務部)とする。

今後は現在落ち込んでいる欧州と米国の回復も期待される。一方、日本市場は「海外と比べて受注の伸びが遅れている」(飯村会長)。引き続き厳しい状況が見込まれる。

【産ロボ/5G・パソコン製造 先導】

産業用ロボットの下期は緩やかに回復に転じる見込み。地域により差はあるが、5Gやデータセンターなどの半導体製造装置向けのほか、パソコンなどの製造ラインで需要が増加。直近では「9月上旬から引き合いが実績に結びついてきた」(ロボットメーカー首脳)、「需要は底を打った」(別のメーカー幹部)との声も上がる。

需要をけん引するのはいち早く新型コロナの影響を脱した中国市場だ。日本ロボット工業会では受注動向について「中国がどれだけ全体をリードするかによる」と話す。課題は停滞している自動車向け。自動車販売も回復は見えつつあるものの影響が尾を引いており、設備導入の先送りなどが続く。

コロナの影響をいち早く脱した中国のロボット市場は今後も成長が見込まれる(イメージ)

コロナ前の需要水準に戻るには「22年か23年までかかるかもしれない」(ミルトン・ゲリー国際ロボット連盟会長)との見方もあるほか、コロナ禍を脱しても米中貿易摩擦が再燃する可能性もある。

楽観視できない状況は続きそうだ。

【建機/中古・ICTに活路】

建設機械は下期も厳しい状態が続きそうだ。日本建設機械工業会がまとめた8月の建設機械出荷額は前年同月比31・4%減の1397億円で、11カ月連続のマイナス。コロナ禍による影響は4月頃を底に徐々に回復を見込んでいたが、8月の減少率は7月(同23・9%減)よりむしろ悪化。輸出の主力市場である欧米が新型コロナ“第2波”の様相で、感染者が増加していることが背景にある。

欧州はスペインや英国、フランスなどでロックダウン再検討の懸念が高まり「工場操業停止など直接の影響はなくても、建設工事や新規投資には重しになる」(建機工)。新車需要の逆風を見越して、日立建機は中古建機やレンタル建機の取り組みを加速。認定業者が純正部品を付けた商品を発売して、一般的な安売り中古建機と一線を画す。コマツは感染防止需要が高まると見てICT建機や無人ダンプを強化する。中国は堅調だが、価格競争が激しいため各社とも拡大には慎重だ。

日刊工業新聞2020年10月9日

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