生産が追い付かない!在宅勤務のお供にプリンターが売れている
インクジェットプリンター大手のセイコーエプソンとキヤノンが、在宅勤務需要を狙った新製品を相次いで投入している。エプソンによると、インクジェットプリンターの市場規模は4月の緊急事態宣言発令以降、最大で従来比5割増えた。各社はコロナ禍で生まれた特需の取り込みを急ぐ。一方、生産が追いつかず、供給不足が続いているようだ。(張谷京子)
インク代安く
エプソン販売(東京都新宿区)は8日、大容量インクタンクを搭載した「エコタンク搭載モデル」シリーズの上位機種「EW―M873T」「同M973A3T」を、それぞれ12月初旬、2021年2月に発売すると発表した。市場想定価格は、M873Tが6万円台前半、M973A3Tが8万円台中盤。
エコタンク方式は、ボトルからプリンター本体に直接インクを注入する仕組み。カートリッジ方式と比べて、A4カラー文書の1枚当たりの印刷コストを約10・4円削減できる。
家庭用プリンターは従来、趣味で利用する人が多かったが、仕事で利用するとなれば印刷枚数が増えるのは必至。エプソン販売のCP・BP MD部の手戸佑介課長は「在宅勤務では(カートリッジ方式と比べて)1枚当たりの単価を抑えたエコタンク搭載型の方が向いている」と話す。
社内データ印刷
一方キヤノンは、家庭用インクジェットプリンター「ピクサス」シリーズを拡充した。「TS8430」「TS7430」は、自宅のパソコンから社内の端末を遠隔操作するリモートデスクトップ方式でも利用可能で、社内データを自宅で印刷できる。消費税抜きの参考価格はそれぞれ3万2500円、1万9500円。
アドビ(東京都品川区)が、都内に勤務する過去3カ月以内にテレワーク勤務を経験したことのあるビジネスパーソン500人を対象に実施した調査によると、テレワークを実施して感じた業務上の課題として、36・2%が「プリンターやスキャナーがない」を挙げた。「会社にある紙の書類をすぐに確認できない」(39・6%)に次いで最も多かった。
在宅勤務の増加に伴い、印刷需要がオフィスから家庭に分散する可能性もうかがえる。エプソン販売の手戸課長は「大きなビジネスチャンスを迎えている」と意気込む。ただ、7月以降は商品供給が追いつかず、インクジェットプリンター市場は低迷しているもよう。エプソン販売販売推進本部の加藤博之副本部長は「現在は従来比80―100%で稼働している。ただ、本来は120―130%で生産しないと需要に対応できないレベルだ」と明かす。
同社の東南アジアのプリンター生産拠点では、現在も新型コロナウイルス感染拡大の影響で、工場稼働時間の制限を受けているという。製品ラインアップの拡充だけでなく、“特需”に対応できる生産強化に踏み切れるかがカギとなる。