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日本学術会議、任命拒否問題で一段と危機感

日本学術会議、任命拒否問題で一段と危機感

学術会議任命拒否問題で野党合同ヒアリングに臨む日本学術会議元会長の大西隆氏(左)と広渡清吾氏(9日、国会内)

日本学術会議が推薦した10月からの新規会員候補者の一部を政府が任命拒否した問題で、政界や学術界で議論が噴出している。政府による任命拒否が明らかになった後、続々と国内の学会が任命拒否に関し説明と速やかな任命を政府に求める声明を公表。一方、政府は学術会議の意義を検討するプロジェクトチームを立ち上げると発表した。政界と学術界の対立に発展し、議論は混迷を極めている。

こうした動きに国内の学会が反応し、日本犯罪社会学会や大学教育学会が緊急声明を発表。そして9日には、日本数学会や日本物理学会など自然科学系の93学会がオンライン会見で緊急声明を発表した。日本物理学会の永江知文会長(京都大学教授)は「新会員を選ぶにあたり理由もなく一部の候補者が外されたことに危機感を感じる。対話による解決を希望する」とコメントした。さらに「多様な考えを持つ人が参加することが欠かせず、『この種の人は不要』といった考え方は危ない」(寺杣友秀日本数学会理事長)、「学術会議という狭い問題ではなく、研究コミュニティー全体に関わる問題」(田近英一日本地球惑星科学連合会長)との学術コミュニティーからの多くの意見が出された。

学術会議は国内の学術コミュニティーの代表とされ、“学者の国会”と言われている。会員は210人で、3年ごとに半数を入れ替える仕組み。政府機関として年間10億円の予算が投じられている。

日刊工業新聞2020年10月12日

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