産業への応用も始まっているゲノム編集、日本企業も開発実装へ取り組む

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生命科学分野の研究で不可欠な「クリスパー・キャス9」の開発者に、ノーベル化学賞が贈られる。同技術をはじめとするゲノム編集技術は、いまや医薬や農産物の品種改良など産業への応用も始まっている。

化学業界では、ゲノム編集を使い、生物の細胞を新素材の工場にする次世代「スマートセルインダストリー」が注目される。植物や微生物は大量のエネルギーを使わずに、多様な化合物を作り出す。ゲノム編集による代謝経路設計や育成環境の制御で目的の化合物を大量に作る細胞を生み出せれば理想の工場となる。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のスマートセルプロジェクトには、東レや宇部興産などが参画する。

住友化学はバイオ技術を活用したエレクトロニクス分野の新規材料の開発に向け、遺伝子を編集した微生物の生産を得意とするベンチャー企業の米ザイマージェンと業務提携した。この微生物が生産した化合物を製品開発に利用する。

ポーラ化成工業は人の皮膚モデルでゲノム編集に取り組み、シミの原因解明や解決策を研究。花王は菌にゲノム編集を施し、乳酸やフマル酸などの有機酸を生産する。フマル酸などは化成品としてさまざまな用途があり、脱石化に貢献する可能性があるという。

ゲノム編集マウスの作製などを手がけるセツロテック(徳島市)は、徳島大学発ベンチャー。「研究者の研究をより早く効率的に展開できるよう、支援事業を提供している」(竹沢慎一郎社長)。同社は徳島大学発の「GEEP法」という哺乳類受精卵を効率的にゲノム編集する導入技術を活用し、家畜の品種改良に挑戦中だ。

凸版印刷は広島大学や広島大発ベンチャー企業のプラチナバイオ(広島県東広島市)と連携し、人工知能(AI)を活用したゲノム編集データベースの構築に向けた研究を進めている。情報基盤の活用は実験のスピード化や研究の標準化につながり、研究結果の社会実装を後押しできる。

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