コロナ禍で水循環の「手洗いスタンド」を世界に!紗栄子さんなど呼びかけ
『公衆手洗い推進パートナーシップ』が発足
水循環を用いた自律分散型水インフラの研究開発・事業展開を手がけるWOTA(東京都文京区、前田瑶介CEO)が主催する『公衆手洗い推進パートナーシップ』が9月25日(金)に発足した。
プロジェクト第1弾である「WELCOME WASH GINZA」では、WOTAが開発した水道に依存しない手洗いスタンド「WOSH」を15ヵ所設置、既にある手洗い場の環境整備により、東京・銀座の街に合計100か所『公衆手洗い』の場を設ける。
「新型コロナウイルスの感染拡大に対して、全世界で様々な対策がなされているが、最も基本的な課題を見つけた。それが『手洗い』だった」。先日、都内で開かれた記者発表会冒頭で、WOTAの前田氏CEOは話した。
感染対策としてアルコール消毒よりも手洗いを推奨するなど、その効力は厚労省も認めている。手や指に付着しているウイルスの数は、流水による15秒の手洗いだけで1/100に。石けんやハンドソープで10秒もみ洗いし、流水で15秒すすぐと1万分の1に減らせるという。
しかし、同社が行ったアンケートによると、外出先で手洗いをしたいと感じる人のうち、79%は「手を洗う場所がなかった、分からなかった」「ハンドソープなど必要なものが用意されていなかった」という悩みを経験していた。
「日本のような先進国でも、手洗いに関する不満がある。世界に目を向ければ約30億人の人は手洗い設備にアクセスできていないという。新しい公衆衛生のためのツールとして、すべての人が無料で使える『公衆手洗い』が必要だと思った。市民ひとりひとりの健康は、街や社会全体の健康に繋がる。安心安全な街には人が集まり、経済活動が活性化する。今回は事業者から働きかける『公衆手洗い』によって公衆衛生と経済活動を両立したい」と前田CEOは『公衆手洗い推進パートナーシップ』への意気込みを語った。
プロジェクトに賛同する飯嶋薫日本ショッピングセンター協会理事(兼R・B・K代表取締役)は、「日本ショッピングセンター協会の3200ヵ所全ての店舗でお客様・テナント・従業員の安心安全に貢献したい。」と語り、前田CEOと同じく公衆衛生と経済活動の両立を強調した。
2010年から被災地や災害時の支援・サポートを行っているというThink The DAY代表理事の紗栄子氏は「被災地や避難所での水の利用に関して、衛生面で疑問に思うことが多々あり、WOTAの製品に賛同した。」と同社の水循環再生技術を高く評価した。
【WOTAの製品、手洗いスタンドWOSHを実際に体験してみた】
WOTAの水循環再生技術を活かした製品の1つが「WOSH」だ。既存のドラム缶を再利用した、高さ1mほどの手洗いスタンド。シンクの周りを木材で彩った、白を基調としたシンプルなデザインは、どんな風景にも溶け込みそうだ。水道が近くになくても20リットルの水と電源があれば、タンク内で水を循環再生処理することにより、約500回の手洗いが非接触でできる。豊田合成と共同で開発した、スマートフォンの表面を99.9%除菌できるUV除菌機能も搭載している。
「センシングと機械学習という独自の技術によって、浄水所をはじめとするような大規模水処理プラントの機能性能が、自動化された状態で数十万分の1くらいのコンパクトなサイズになって、タンクの中に詰まっている。使用済みの水を98%再利用できる水準にある」と前田CEOは説明する。
実際にWOSHを利用してみた。まずは、手を洗うシンクの横にある細長い穴にスマホを入れる。観光地や、買い物のために来る場所では、すぐに調べ物ができるようにスマホ片手に歩いている人も多いだろうから、自然な動作だろう。除菌にかかる時間は30秒。その間に、シンク上部に備え付けられたセンサーの前に手をかざしてハンドソープを出し、手を洗う。私は30秒という時間をだいぶ余らせてしまったが、ゆっくりと丁寧に手を洗うとちょうど良い時間なのだろう。循環再生された水は肌に柔らかい印象を受けた。自前のハンカチで手を拭い、スマホを回収して手洗い完了だ。水滴を風で飛ばす機能や、ペーパーの設置場所はなかった。「風を出す機能は電力を割と食う。たくさん利用してもらってデータが集まれば、コストを抑えられる設計となっているため、いずれはアップデートできたら良いと考えている」(WOTA関係者)。
メンテナンスも、水の補充とフィルターの交換という2ステップで完了する簡単なものだ。「コピー機くらいのユーザビリティを目指した。」と前田CEOは強調する。
「手洗いというのは非常に基本的な手指衛生の手段かつ、日常的にしたくなる行為であり、その希望を叶えたかった。20リットルの水と電源があれば『どこにでも置ける』というWOSHの利便性や、自社の技術を活かして、上下水道が整っていない国でも、なるべく早く『手洗い』や水の利用環境を届けていきたいと考えている」(前田CEO)。
コロナ禍によって自らの身を清潔に保つことの大切さを誰もが認識したことだろう。ひとりひとりが手を洗うことは社会全体の安心につながること。今回発足した『公衆手洗い推進パートナーシップ』により手洗いの習慣を普及していくことは、ウィズコロナである今だけでなく、これからの人類にとって大きな財産となるのではないだろうか。