総力戦!コロナと戦う中小企業の製品・技術まとめ #01
新型コロナウイルスの感染拡大防止の切り札として、中小企業が独自に開発した製品・技術に熱視線が注がれている。独自の技術力を基に、感染予防に欠かせないマスクや消毒液、飛沫(ひまつ)拡散防止板などを開発。需要が急増していることから、各社は増産に乗り出す。
オーダーメードで工場直販
野火止製作所 透明アクリル樹脂製間仕切り野火止製作所(埼玉県新座市、川上博史社長、048・481・2300)は、新型コロナウイルスの飛沫感染を抑えるための透明アクリル樹脂製の間仕切りを取り扱う。主力の板金加工で使うレーザー加工機により、アクリル樹脂板をオーダーメードで切断し、サイズや形状などさまざまなニーズに応じる。
工場直販とすることで価格を市販品の7割程度に抑制。例えば、高さ500ミリ×厚さ3ミリメートルで幅900ミリメートルのサイズなら1万1000円台(消費税抜き)、幅600ミリメートルなら9000円台(同)で提供する。オフィスや会議室、社員食堂や対面で応対する役所、店舗など法人向けに最低20セットから注文を受けている。
軽量でソフトなフィット感
信菱電機 透明フェースシールド信菱電機(長野県飯田市、川手清彦社長、0265・25・7772)は、顔への飛沫を防ぐ「顔面シールドSE」を商品化した。
強みは軽量でソフトなフィット感。顔面を覆う部分には高透明PETシートを、額が当たる部位にはウレタンをそれぞれ採用した。約23グラムと軽量で、長時間装着していても締め付け感がないという。
送風機や家電製品の設計から加工、組み立てまでを一手に担う同社。培ってきた総合力を活かし、“畑違い”の製品ながら図面から起こして必要部材は既存ルートで調達した。
サンプルを飯田保健所で評価済み。5枚一組で価格は消費税込み・送料別1980円。部材が安定調達できれば、1日1000枚の生産能力で供給する。
手指消毒用 神戸市に納入
白鶴酒造 高濃度アルコール白鶴酒造(神戸市東灘区、嘉納健二社長、078・822・8901)は新型コロナウイルスの感染拡大を受け、手や指の消毒用に使うことが可能な高濃度アルコールの生産を開始した。神戸市に5リットル容器入り1000本の高濃度アルコール、計5000リットルを供給する。
商品名は「アルコール77」。清酒づくりに欠かせない原料として、同社が仕入れている醸造アルコールを消毒に適したアルコール濃度77%に加工。消防法の規定による許可を受け、1日当たり400リットル未満の生産が可能という。神戸市への納入価格は未定。同社は「神戸市への供給が最優先」とした上で「引き合いがあれば、消費者や民間病院向けへの販売を検討する」としている。
スポーツウエア素材で吸湿速乾
ハマノクリエーション デザインマスクハマノクリエーション(東京都墨田区、浜野弘明社長、03・6658・8901)は、吸湿速乾性の高い機能性素材のマスク「3DWashable Mask(ウォッシャブルマスク)」を発売した。スポーツウエア素材を活用し装着感の高い形状に設計。二重構造の間に3層の不織布シートを入れて使用する。消費税抜きの価格はマスクケース付で1500円を予定。
同社はゴルフウエアの受託製造を中心に手がける。吸湿速乾性が高く肌触りの良い段ボールニット素材を採用し、ファッション性に配慮したデザインマスクに仕上げた。白、黒、ネイビー、グレーの4色。手洗いで繰り返し使用できる。シートは別売りで、40枚入りで1500円。
中間に不織布入れた5層構造
小杉織物 絹糸織り布マスク小杉織物(福井県坂井市、小杉秀則社長、0776・66・0255)は、絹糸で織った布マスクを発売した。価格は消費税抜きで1枚1500円。自社のウェブサイト、卸販売で展開して、1カ月で約8万枚を出荷した。
同社は浴衣帯のメーカーで、国内シェアが9割。その自慢の高速織機で袋状の生地を作り、中間に不織布を入れた5層構造にした。絹は肌に優しく抗菌性があり、帯メーカーらしい意匠性も特徴だ。
続いて抗菌性の実証データ付の銀イオン蒸着糸を使ったマスクも製品化。価格は同2000円前後を予定し、近く受注を始める。浴衣帯の商談が相次ぎ不調となる苦境でマスク作りに挑戦し、全社員で奮闘している。