SNSでも賛否はあるけど 「子連れ出勤」で人材と雇用を守る!
社員の15%、子連れ出勤
【いち早く導入】ソウ・エクスペリエンス(東京都渋谷区、西村琢社長、03・6431・8360)は、アクティビティや癒やしの時間など体験型ギフトを手がけるベンチャーだ。しかし同社が目を引くのは、その事業モデルのためだけではない。実は、いち早く「子連れ出勤」を取り入れた企業としても注目される。人材が限られるベンチャーにとって社員の退職は大きな痛手。西村社長は「ベストアンサーではないが、人材や雇用を確保するための施策の一つとして位置づけている」と信念を語る。
同社は2013年に子連れ出勤を始めた。原則として子どもが3歳までは親子での出社を認めている。現在、90人前後いる社員のうち約15%が利用している。毎日子どもと出社する社員もいれば、週に数回という社員もいるように、利用方法はさまざまだ。
【退職を防止】「業務を鑑みれば当然、子連れ出勤でない方が効率的」と西村社長は打ち明ける。ただ出産や子育てを機に社員が退職してしまったり、子どもを保育園に預けられず就職できなかったりすることを考えると、結果的に「子連れ出勤の方がうまく機能する」(西村社長)と見ている。
同社の働き方はテレビ番組などにも多数取り上げられてきた。ただ放映後、参加交流型サイト(SNS)上ではさまざまな意見が飛び交ったという。「こんな状況で働けるわけがないと否定的な意見もある」と西村社長。それでも2カ月に1度の頻度で同社の働き方を社外に紹介する“見学会”を続けてきた。「見学会に来た人は皆『意外とできるんですね』と口をそろえる。こうした言葉が励みになっている」と西村社長は手応えを語る。
子連れ出勤といった新たな働き方を実現するのは簡単ではない。「子どもが普段と違う環境に慣れるまで、最初の1―2週間は覚悟が必要」(西村社長)なのはもちろん、皆が無理をせず働けるような工夫も大切だ。
同社は子連れ出勤ばかりが注目されるが、05年の創業当初から週3―4勤務やリモートワークなどの柔軟な働き方を推進してきた。コロナ禍に直面した現在は「(世の中の)新型コロナ感染者の状況に応じて、1週間ごとのペースで出社と在宅を切り替える」(同)ことも予定している。
【家族の時間割】西村社長自身も在宅勤務中、自宅で家族の「時間割」を作成したという。遊ぶ時間や宿題・仕事に取り組む時間、食事の時間などスケジュールをきちんと設定したことで「子どもたちが真剣に宿題をする間は自分も仕事ができた」と振り返る。
社員全員が働きやすい環境作りは経営者の大きな課題。新型コロナはこの流れを加速した。それに対応できる企業は、コロナ禍でも強さを発揮しそうだ。