トヨタが事務・技術職も在宅勤務制度の恒久化を検討、働き方が変わる
【特例の恒久化】
トヨタ自動車が新型コロナウイルスの感染防止に向け特例で強化していた在宅勤務制度について、恒久化の検討を進めている。9月にも新制度の運用を開始し、一時的に対象としている事務職や技術職の若手や育児・介護で時短勤務中の社員にも在宅勤務を認める方針だ。通勤の負担軽減や時間の有効活用など、業務効率化に大きく寄与することから制度の拡充に踏み切る。最大手のトヨタが在宅勤務の活用を加速することで、働き方改革に向けた取り組みが国内企業に広がりそうだ。
トヨタはこれまで、在宅勤務の対象を事務部門などで一定の役職以上の社員に限定していたが、コロナ禍を受けてその範囲を特例で拡大した。公共交通機関の利用者が多い東京本社(東京都文京区)と名古屋オフィス(名古屋市中村区)では、3月末から原則として在宅勤務に移行した。6月に一度解除したものの、足元の感染の再拡大により在宅勤務を再び推奨している。
7月末時点で東京の在宅率は約7割、名古屋でも約5割といい、在宅勤務が浸透。社外から社内ネットワークに同時接続できる人数を2018年の約5000人から、約4万5000人に増強するなど在宅勤務のインフラ整備も進めてきた。
【工場でも検討】
9月からの新制度では、特例措置であった事務職や技術職の在宅勤務を制度化する計画だ。若手や育児・介護で時短勤務中の社員にも在宅勤務を認めるほか週2時間の出社義務を撤廃するなど、柔軟な働き方ができるようにする。在宅勤務の導入が難しい工場勤務者についても「生産性向上の観点から実施できないか検討する」(トヨタ)としている。
【学びを生かす】
トヨタ首脳は「コロナ対応としての在宅勤務だったが、働き方改革として非常に有効なことを確認できた」と強調する。今後もコロナ対策での学びを生かしつつ、フリーアドレスの導入などオフィスの変革を抜本的に進める考え。豊田章男社長は一連の改革について「未来への投資やこれからのトヨタに必要な仕事へと、リソーセス(経営資源)を変更できる機会になるだろう」と期待をかける。
同時に「コミュニケーションの質の確保や人材育成」(トヨタ)といった課題も顕在化している。豊田社長が「現場で長年培ってきたものに関しては、どんなにIT化や在宅勤務が進んでも人間がやるべき仕事だ」と指摘するように、工場のカイゼン活動といった人の手による現場業務の重要さは、いつの時代も不変だ。変えるべきものと守るべきものを見極めながら、次代の働き方を模索していく。