G7で最下位の日本の生産性、「デジタル化×付加価値」で国際競争力を復活せよ!
日本の生産性が伸び悩んでいる。OECD加盟国の中で日本の労働生産性は低位が続き、国際競争力をそいでいる。日本生産性本部がまとめた「生産性白書」では、経済のデジタル化に追いついていない日本企業の現状や、イノベーションを創出する環境が醸成されない企業風土などを指摘。生産性向上に向けた提言を示している。
生産性白書は日本生産性本部創立の65周年を機にまとめた。労働生産性は高度成長期に急速に向上したが、1990年代以降頭打ちとなっている。茂木友三郎会長は「65年の前半は三種の神器など消費者が欲する付加価値の高いモノが出てきたが、後半のバブル崩壊以降、そういうものが出なくなった」と、生産性伸び悩みの要因を分析する。
国際的に見ても、日本の生産性の伸び悩みは顕著だ。日本の就業1時間当たりの労働生産性は近年、主要先進7カ国で最下位が続いており、OECD加盟国の中で見ても80年代後半から19―21位と低迷が続く。生産性常任委員会の福川伸次委員長は「厳しい国際競争の中で、生産性をいかに改善するかが問われている」と強調する。
白書では、日本のデジタル対応や人材投資、イノベーション創出の環境などさまざまな角度から問題点を指摘している。
日本は90年代の情報通信技術(ICT)化以降、新たなビジネスを展開する米国などとのギャップが広がっていると指摘。人工知能(AI)やロボットの活用でも同様だという。背景には、デジタル技術の利活用と経営戦略がうまく結びついていない上に、デジタル技術を活用できる人材が不足しており、中小企業が多い日本ではICTの費用負担が重く、容易に投資に踏み切れない状況が多くあると分析している。
欠かせぬ人材投資 イノベ創出挑戦の風土に
また、日本の教育訓練投資(オン・ザ・ジョブ・トレーニングを除く)は91年をピークに減少しており、生産性の向上にとって重大な要素である人材投資に対する消極姿勢を問題視。日本企業が創造的イノベーションを実現できない理由に、リスクを取ることに消極的な経営や、失敗が許されない企業風土にあると指摘している。
こうした分析を基に白書では、イノベーションの促進を提言の柱に据えた。生産性向上には、生産性の式の分母に当たる効率化の改善は限界に近づいており、「これからは(分子に当たる)付加価値をいかに高めるかにも注力する必要がある」(福川委員長)。白書では、付加価値の増大にはイノベーションがカギとなり、その実現には人材への投資が欠かせないと強調している。先端技術分野の人材育成や、ビジネスモデルを創出する次世代リーダーの育成が必要で、失敗を恐れない挑戦意欲と戦略性に富んだ経営者の育成も必要だとした。
デジタル技術の進展に合わせて「生産性向上の効果を測定する新たな指標の開発」も提言に掲げた。サービス経済の高度化やシェアリングエコノミーの拡充など経済や市場の変化に応じた生産性測定の方法の確立が求められているとして、日本生産性本部として生産性向上の進展度合いを評価する新たな指標の作成に着手するという。
菅義偉首相はデジタル庁の創設などデジタル化の推進を打ち出している。福川委員長は「問題はデジタル化をいかに付加価値に結びつけ、生産性向上につなげるかが重要だ」と指摘する。日本経済は新型コロナウイルス感染症対策と経済の立て直しの両立が目下の課題だ。「生産性改革は日本経済を立て直すための最重要課題。特にコロナ禍で付加価値の高いモノやサービスを創出する必要性が今まで以上に高まっている」(茂木会長)だけに、官民が連携して生産性向上に取り組める環境を整備することが求められる。