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採石から建築、レジャーまで。多様な柱を持つ大協組が拓く循環型社会

採石業の新たなビジネスモデル描く
採石から建築、レジャーまで。多様な柱を持つ大協組が拓く循環型社会

2017年に焼却灰処理の新プラントを稼働。処理能力は従来比1.7倍に

中国地方最高峰の「伯耆大山(ほうきだいせん )」を臨む、鳥取県米子市に本社を構える大協組。「誠心誠意」の精神と創造性あふれる社風で成長を遂げてきた。採石事業を祖業とし、1970年代に建築・舗装事業に進出。1991年には自家源泉の日帰り温泉「オーシャン」を開業し、レジャー事業に本格参入した。土木・建築・舗装の工事部門、採石部門、リサイクル建設資材を扱う環境事業部門、日帰り温泉・ビジネスホテルなどのサービス部門と多様な柱を持つ。

公共工事の受注激減で苦境に

転機が訪れたのは今から約15年前の2005年頃のこと。当時、公共工事の受注が激減し、売上高はピーク時の半分程度に落ち込んでいた。これまで培ってきた経営資源で持ちこたえていたが、「会社は非常に厳しい状況に置かれていた」。松本明専務取締役は当時をこう振り返る。

苦境にあえぐ中、近隣の王子製紙・米子工場からバイオマス発電所の焼却灰を活用できないかと声がかかる。鳥取大学や米子工業高等専門学校など外部の知見を借りながら、研究を重ね、焼却灰をリサイクル材として利用できるとの手応えをつかむ。起死回生の一発を狙い、製造プラントなど大型の設備投資に踏み切った。

地域未来牽引企業選定証をバックに松本明専務取締役

完成したのが高機能建設資材「エコソイルR」だ。軟弱地盤に直接盛土でき、多孔質で吸水性に優れる。湧き水の出る場所や水マサ地、水田など従来技術で対応できない軟弱地盤対策に有効だ。処分するはずの焼却灰が高機能材料として生まれ変わり、循環型社会にも貢献する。

実は当時、焼却灰を加工する技術は世の中に存在していたが、リサイクル資材としては普及していなかった。要因を分析したところ、使い勝手にあることが分かった。他社では粒状に加工することが一般的だったが、それでは用途が限られていたのだ。

逆転の発想が的中

そこで大協組は「岩石化」という、粒状化とは逆方向に舵を切った。ヒントは本業の砕石事業にあった。「大きな岩の塊を砕き、さまざまなサイズに加工して路盤材や建設資材にするノウハウを当社は持っている。同じ発想で展開してはどうか」(松本専務)と思い立った。これが当たり、焼却灰の受け入れから製造、販売、施工までの好循環を構築し、事業は軌道に乗った。

独自製法の新規性が認められ、2011年には「焼却灰を原料とした資材の製造方法」で特許を取得。鳥取県認定のグリーン商品にも「エコソイルR」は選ばれた。これを皮切りに浚渫土改良材「デイヘンダー」や防草材「ノングラス」、太陽光設備の造成材「ソーラーソイルR」など派生商品の展開につながっていった。

ライセンス事業にも進出

さらにライセンス事業として、保有特許とノウハウを活用した焼却灰リサイクルのトータルサポートにも乗り出し、鳥取県発の新技術を全国に発信。現在、栃木県や福井県で「エコソイルR」の製造が始まったほか、他地域でも準備が進む。特許で自社の技術を守りつつ、全国の採石業の新たなビジネスを後押しする。

また、鳥取大学と共同で「エコソイルR」に農業用肥料のリンを吸着する性質があることを研究しており、吸着剤として花卉栽培などでの用途を見込む。

敷地内に設置した高精度機器を備えた化学分析室

「エコソイルR」のヒットも加わり、業績は右肩上がりの成長を続ける。ピーク時にはまだ届かないものの、2019年8月期は売上高32億円に達した。設備投資も積極化しており、毎年2億円から4億円程度を投じている。

2017年には焼却灰処理の新プラントを稼働。処理能力は従来比1・7倍に膨らんだ。昨年には鳥取県内の新たな木質バイオマス発電所の建設計画を見込んで、焼却灰の受け入れ保管場所を2倍に拡張。また、自社敷地内に高精度の機器を備えた化学分析室を設置し、土壌環境基準に適合した安心・安全なリサイクル材を提供し続けているほか、近く計量証明事業にも参入する。

松本専務は「事業多角化の効果は極めて大きい。業績が自然に安定した」と話し、当面は土木・建築、砕石、レジャー、環境など主力事業を育てて「会社の幹を太くする」方針だ。 その上で「顧客に求められる存在であり続け、ニッチトップになることが目標。幅広い可能性を持った会社にしたい」と将来を見据えている。

【企業概要】
▽所在地=鳥取県米子市蚊屋235番地2▽社長=小山典久氏▽設立=1961年▽売上高=32億円(2019年8月期)

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