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TikTokの米事業をオラクルが買収、背景にトランプ大統領?

中国の北京字節跳動科技(バイトダンス)傘下の動画投稿アプリケーション(応用ソフト)「TikTok(ティックトック)」の米国事業の売却先として、米オラクルが選ばれた。同事業をめぐっては、オラクルとマイクロソフトとの争奪戦が焦点となり、最終局面に入り、マイクロソフトの提案は拒否され、トランプ大統領による買収支持を得た格好で、オラクルが今回のディール(取引)を射止めた。(編集委員・斉藤実)

トランプ政権は安全保障上のリスクを理由として、米国からTikTok事業を締め出すことを表明し、複数の米ITベンダーが買収に名乗りを上げていた。

トランプ政権が問題視したのは、TikTokの利用者の個人情報が流出すること。アプリの閲覧内容や位置情報、使用端末情報などの情報がTikTokを通して、中国政府に流れることを懸念している。TikTokはこれを否定しているが、背景には米中をめぐるハイテク・貿易戦争もあり、問題の根は深い。

米国以外では、すでにインドがTikTokの利用を禁止、豪州も検討中という。日本でも自民党内では禁止法案の整備も持ち上げており、今後の動向が注目されている。

今回の買収交渉の詳細は明らかにされていないが、関係筋によるとオラクル、マイクロソフトともそれぞれ買収金額として、約250億ドル(約2兆6500億円)を提示していたという。

また、米国メディアの報道によると、TikTokが切り出す米事業の株式をオラクルが取得し、技術パートナーとなるといった話も出ている。

オラクルはシリコンバレー生まれの米国企業。リレーショナル・データベース(RDB)事業を中核として、成長を遂げ、現在は基幹系アプリケーションやクラウド基盤などエンタープライズ(企業や官公庁向け)領域でさまざまな事業を展開している。米ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ(ZVC)が提供するウエブ会議システム「Zoom(ズーム)」向けに、4月からクラウドサービス基盤の提供も始めている。

創業者のラリー・エリソン氏は世界の長者番付に名を連ねる有名人。トランプ大統領の支持者としても知られる。エリソン氏は2017年に最高経営責任者(CEO)の座をサフラ・カッツ氏に委ねる一方で、現在は会長兼最高技術責任者(CTO)として活躍している。

老舗ITベンダーのオラクルが若者に人気のTikTokの魅力をどう引き出すかも注目されている。

日刊工業新聞2020年9月15日

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