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米が就労ビザ停止、すでに広がる日本企業への波紋

トランプ米大統領が外国人労働者に対する一部の就労ビザの発給を2020年末まで停止すると発表したことを受け、日本企業に波紋が広がっている。新型コロナウイルスの影響で発表前からビザの発給が滞っており、すでに日本企業の業務に支障が出始めている。影響は人事異動にも広がる可能性があり、日本企業にとって打撃になりかねない。

日立、統合作業に支障

日立製作所は20年末で米国の就労ビザが切れる駐在員が二十数人いる。日立は17年に買収した現地の空気圧縮機メーカーなどへの出向者のほか、力を入れるIoT(モノのインターネット)共通基盤「ルマーダ」事業の世界本社も米国に置く。

新型コロナの影響で米大使館は緊急の場合を除きビザの発給業務を事実上停止している。この影響で日立では買収後の統合作業にすでに支障が出ている。特に19年末に買収したロボットシステム構築業者のJRオートメーション(ミシガン州)は新たな経営陣を決めたものの、ビザの発給が滞っており、現在商用の短期ビザでしのいでいる状態だ。日米の時差もあって統合作業が遅れかねない。

三菱ケミ、人事へ影響懸念

「期間中の新規駐在の人事異動の発令は難しくなる」(三菱ケミカル広報)との声もあり人事異動の影響も懸念される。三菱重工業は駐在する社員の派遣や帰任を延期する可能性があるとしている。

キヤノンは販売会社に日本人従業員が多く在席。バージニア州の生産拠点も技術者の行き来が多く、事態の長期化を懸念している。

発給を停止するビザは、主にハイテク業界の高技能労働者が取得する「H―1B」、企業駐在員らの「L」など。例外もあり各社が確認に追われている。

今回の発給停止は秋の大統領選もにらんだ米国人の雇用確保が狙い。オークマの堀江親専務は「日本人の米国での活躍は、米国経済の発展に寄与するものと理解している。日米両政府に早期の改善を求めたい」と訴える。経団連の中西宏明会長も24日の会見で「偏った政策だ」と不快感を示し、両政府に改善を申し入れていることを明らかにした。

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