対米、対中、対韓...「安倍外交」をどう評価?長期戦略の裏に菅さんあり

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G20サミット=19年6月

東京大学 先端科学技術研究センター教授 牧原出氏「多様な戦力、求められる調整力」

―安倍政権の外交政策をどのように評価しますか。

「3年3カ月で終わった民主党政権の後に誕生した第2次安倍政権は、安定した外交手腕を発揮した。世界経済の発展、グローバル化によって多様な外交関係の構築が求められている中、外務省の組織力強化や谷内正太郎元外務事務次官の初代国家安全保障局長就任など体制を整え、初めて長期の戦略的外交が行われた政権となったと言える。次期首相と目される菅義偉官房長官の役割も大きい。各省庁との調整を取り仕切っていた。この長期政権は菅氏なしにはあり得なかった」

―安倍外交の実績をどう分析しますか。

「大きな成果としては、米トランプ大統領との信頼を構築したことだ。安倍首相は2016年、大統領選で当選が決まったトランプ次期大統領(当時)との会談を、主要国として初めて実現させた。その後も会談を重ねることで、安倍首相の実直な性格を理解してもらった。この信頼関係が、19年にまとめた日米貿易協定で、他国と比べて日本側の関税を低く抑えることにつなげられた。また米政権が拉致問題を取り上げるなど、日本の国益を入れ込むことにも成功した」

「一方、中国については、習近平国家主席を国賓として迎える予定だったが、(新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり)延期せざるを得なかった。韓国とは関係悪化が続いている。露プーチン大統領とは信頼関係を築けたものの、北方領土問題は進捗(しんちょく)がみられなかった」

―今後の米中関係をどう読みますか。

「米中貿易摩擦は激しさを増しており、収束が見えにくい。米国は安全保障の観点から華為技術(ファーウェイ)やTikTok(ティックトック)など中国企業を排除する動きが続きそうだ。米大統領選挙が11月に迫っており、現時点では民主党のバイデン・前副大統領が優勢な状況とみられる。民主党は自由貿易に懐疑的な政治家が多く、仮にバイデン氏が大統領に選ばれても、米中間の緊張は続くだろう」

―新型コロナの外交への影響は。

「新型コロナの感染拡大により、外交スケジュールの変更が余儀なくされている。20カ国・地域(G20)やアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議などが年内に開催予定だが、流動的な状態だ。21年に入っても、直接の会談が行えない可能性が高い。テレビ会議による首脳会談が増えれば、外交が進めにくい状況になるだろう」(聞き手・浅野文重)

東京大学先端科学技術研究センター教授・牧原出氏

日刊工業新聞2020年9月11日

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