アストラゼネカなど臨床中断でワクチン開発ブレーキ!「科学的見地から商用化議論を」

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アストラゼネカのステファン・ヴォックスストラム社長〈左〉と加藤勝信厚労相=8月

新型コロナウイルスワクチンの開発にブレーキがかかった。英アストラゼネカと英オックスフォード大学は9日までに、開発中のワクチンに関し有害事象が発生したとして臨床試験の一時中断を決めた。経済活動の正常化に不可欠なワクチンへの需要と期待は高く、各国政府が調達を急ぐ。しかし、言うまでもなく安全性・有効性の評価の確実な実行が欠かせない。(安川結野、中野恵美子)

一時中断となったのは、アストラゼネカとオックスフォード大が開発を進める新型コロナワクチン「AZD1222」。日本で4日に始まった第1/2相臨床試験も中断する。医薬品開発で「投与の一時中断は、安全性評価の上で発生する通常の措置」(関係者)。アストラゼネカは有害事象とAZD1222の因果関係を調査し、検証結果をもとに臨床試験の中止または再開を判断するという。

アストラゼネカ公式ページより(写真はイメージ)

新型コロナワクチンの開発は国内外で急ピッチで進む。国内ではアンジェスが大阪大学などと「DNAワクチン」を開発、第1/2相臨床試験を始めた。塩野義製薬は11月までに遺伝子組み換えたんぱくワクチンの臨床試験を始め、21年末までに3000万人分の供給を目指す。

各国政府はワクチン確保に向け前のめりだ。日本政府は2021年前半までに全国民へのワクチン供給を目指し、6714億円を予備費に計上し、準備を進める。アストラゼネカを含めた複数の製薬企業から、合計2億8000万回分のワクチンを調達する算段をつけた。また米国ではトランプ政権が、臨床試験の終了前に例外的にワクチン投与を認める「緊急使用許可」に踏み切る可能性が取り沙汰される。

こうした中、製薬企業からは、適正な安全性評価を喚起する動きが出てきた。米ファイザーやアストラゼネカなど欧米の製薬企業9社は、それぞれ開発を進める新型コロナのワクチンについて「科学的な過程を順守する」との共同声明を発表した。「当局が求める大規模な最終臨床試験を通じ、安全性と有効性が示された後に、承認や緊急使用を申請する」と明言。治験終了前の緊急使用許可の申請を否定した。

日本国内でも「投与回数などに応じた安全性を確保した上で、科学的見地から商用化の議論がなされるべきだ」(大手製薬首脳)と指摘が上がる。

アストラゼネカの臨床試験中断を受けて菅義偉官房長官は9日、全国民分のワクチン確保を目指す方針を重ねて表明しつつ、「臨床試験などのデータと最新の科学的知見に基づき、有効性と安全性の確保の観点から承認の可否を適切に判断していく」と語った。

新型コロナのワクチン開発がいつ成功するか見通すのは困難。政府は開発の成功を前提とした準備だけでなく、安全性評価が開発スケジュールに与える影響や、開発が中止となった場合のリスクへの対処も検討する必要がありそうだ。

日刊工業新聞2020年9月9日

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