塩野義製薬社長が語る、コロナ+インフル時代の生き方

「自分の状況を正確に把握する」

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治療薬・ワクチン、国産重要

感染症を注力領域に据えてきた塩野義製薬が今、新型コロナウイルスの治療薬やワクチン開発で注目されている。2025年3月期を最終年度とする新中期経営計画では5年間で過去最高規模となる5000億円の事業投資を計画。感染症との戦いで今後も世界をリードしていく構えだ。コロナ禍での経済活動のあり方や日本社会に求められる対応について、塩野義製薬の手代木功社長に聞いた。

―感染症に対し、どのようなリスク管理が必要ですか。

「治療薬やワクチンは安心材料になりうるが、まずは個人が自分の状況を正確に把握すること。今後はインフルエンザと新型コロナが同時に流行すると予想される。両方の検査を受け、適切な医療を受けるための流れ図を作成してほしい。全員を隔離して経済活動を止めるのには限界がある。感染しないことより、重症化しないことが大事だ。呼吸器疾患全体で対処法を考えなければならない」

―日本の社会構造が変化しつつあります。

「新型コロナ以前から、日本経済は生産性の向上が課題とされてきた。テレワークにしても、いずれもたらされた仕組みだ。感染症のオンライン診療が可能になったが、かねて感染症は在宅での診療が望ましいとされていた。また、提携先の中国平安保険(広東省)では、自動車事故が起こると町中のカメラデータを活用し、人工知能(AI)による被害の分析から保険金の入金まで30分で完結できる。世界のベストプラクティスを日本でどこまで実現できるか検討する良い機会になる」

―米中関係の悪化で世界経済の行方が不透明です。また、国内ではコロナ対策による財政悪化が心配です。

「米国が大統領選挙を控えていることもあり、米中対立がより鮮明になった。日本にとっても重要な二大国だが、正常化には時間がかかるだろう。一方、日本の財政赤字拡大はやむを得ない。立ち直りへの道筋を明確にする必要がある。次の柱を育てるリバイバルプランに注目したい」

―製薬企業として貢献できることは。

「新型コロナ治療薬・ワクチンの開発は大きなテーマだ。当社は人材や資金などかなりの資源を投じている。各国の企業が独自に開発を進めることは、どの技術基盤が感染や重症化を防ぐのに有効か見いだす上で重要だ。日本で製造する能力を確保することは、国際的な枠組みの中で国内の患者へ優先的に提供でき、意義が大きい」

【記者の目/今後も続く感染症との共存】

新型コロナに世界経済が翻弄(ほんろう)されているが、今後も感染症と共存していかなくてはならない。手代木社長が「社会構造の変革は必然だった」と指摘するように、このような時代だからこそ変革に臨む姿勢が問われるだろう。終わりが見えない感染症の脅威に対し、変化に機敏かつ柔軟に対応できる企業体質が求められる。(大阪・中野恵美子)

日刊工業新聞2020年6月5日

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