音楽ビジネスに参入する西武HD、新事業を新たな経営の柱に
西武ホールディングス(HD)は、新規事業の育成を加速するため、事業統括会社「ブルーインキュベーション」を設立した。第1弾として音楽関連ビジネスに参入する。新型コロナウイルス感染症による社会環境の変化で、鉄道やホテル、不動産といった既存事業に大きな影響が見込まれる。グループの資産を活用しつつ、自由な発想で新規事業を生み出し、サポートする体制を整えることで、新たな経営の柱として成長を促進する考えだ。
ブルーインキュベーションの代表取締役には、西武HDの原田武夫社長室長兼経営戦略部長が就いた。西武HDは2017年に新規事業分野を創出するための専門部署「西武ラボ」を設立。3年間の活動を通じて、複数の分野で事業化できるめどがついてきたことから、事業会社を生み出して管理していく統括会社を立ち上げた。
第1弾となる事業会社「ブルーミューズ」では、親子のライフスタイルをテーマに掲げて、リアル・バーチャル両面で音楽との接点提供に取り組む。グループには、メットライフドームや横浜アリーナ、プリンスホテルといった音楽イベント会場があり、鉄道やホテルなどで多くのファミリー顧客を抱える。
今後も、サステイナビリティーやシェアリングなどをテーマに、事業会社の設立を視野に入れる。
またコーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)の機能も念頭に置いており、グループ外との連携による事業創出も積極化していく。
【インタビュー】ブルーインキュベーション・原田武夫代表
ブルーインキュベーションの原田武夫代表取締役に新規事業創出の方針などを聞いた。(小林広幸)
―ブルーインキュベーション設立の背景は。「経営トップに、新しいことに取り組む必要性への強い思いがあり、2017年4月、新規事業の創出を目的に“西武ラボ”を立ち上げた。グループからアイデアを募り、試行錯誤を繰り返してきた結果、形になりそうな事業が出てきた。ラボで出た芽を大きく育てるのが狙いだ。新しく生まれる会社を、統括会社の傘下に置き、グループの新規事業として“ブルー”のブランドを作っていく」
―“ブルー”で手がける新規事業は。「第1弾のブルーミューズでは、音楽という切り口で私たちが大事にしたい親子層へのサービスを広げる。音楽の持つ力は(新型コロナウイルス感染拡大に伴う外出自粛の)ステイホーム期間にも感じられた。ラボは既存事業から離れることに比重を置いており、テーマも新しい感性に特化している。消費者の感性を先取りする事業を創出していきたい」
―新型コロナで社会環境の変化、行動変容は加速しています。「突然変化を突きつけられた。鉄道、不動産、ホテルといった既存事業は、すぐにやり方を変えられるわけでない。ラボは小さな存在かもしれないが発想が異色で、グループを変える触媒になっている。ソサエティー5・0や5G(第5世代通信)が社会を大きく変える。人間の感性が研ぎ澄まされるようになる。人との接点もどういうものを提供できるのか。人間の根源的欲求がコロナ禍でどうなるか注目したい」