自由過ぎる西武HDの新規事業公募は定着するか
西武ホールディングス(西武HD)は12月上旬、ダイヤゲート池袋(東京都豊島区)で新規事業アイデア公募プログラム「SWING OPEN」のワークショップを開いた。参加者はプログラムの概要や、事業会社の説明等を聞いた後、応募者との交流を通して自分のアイデアをブラッシュアップしていった。
今年度の応募テーマは「Distance, Re-stance ~距離「感」に対するスタンスの再定義~」。人々とのコミュニケーションに重きを置いてきた西武HDだからこそ、物理的・心理的な距離「感」を再定義するようなアイデアを募集している。経営企画本部西武ラボ部長の田中健司氏は、「今や在宅で何でもできる時代になったが、西武グループのスローガンである”でかける人を、ほほえむ人へ。”の実現のため、お客さまにあえて出かけてもらう価値を生み出して欲しい」と語ったうえで、「移動を手段から目的に変えるような取り組み」や「移動先のコミュニティ創出」などをアイデアの一例として挙げた。
ワークショップには男女合わせて35名が参加。各事業会社の担当者から求めるアイデアの方向性について話を聞いた後、テーマである「距離感」についての課題を皆で出し合った。参加した西武グループの女性は、「普段社外の人と交流する機会がないので、他の業種の人の意見を聞きたかった。自分一人では気づくことができないような視点で物事を捉えられる点に魅力を感じた」という。
来年1月16日の公募締め切りまでは、西武HDや内容に合った各事業会社のメンバーとの相談・アイデアのブラッシュアップのために個人面談が設けられる予定だ。
東京圏の人口増が早晩頭打ちを迎え、鉄道利用者数も減少が見込まれる中、鉄道各社は多角化を急いでいる。西武HDも今後さらなるグループの成長には新規事業の創出が肝心だと考えている。そこで同社は2017年には新規事業を創出するための専門部署「西武ラボ」を立ち上げ、また昨年からは新規事業創造プログラム「SWING」を始めた。
このプログラムの応募者は個人・法人問わず、また実現したい技術や組織などが形になっている必要はない。「既に完成している事業に対して資金提供をしたり、自社のリソースを活用してもらう」という従来の「大企業×ベンチャー・スタートアップ」という構図からは一線を画している。
都市交通・沿線事業、ホテル・レジャー事業など、多岐にわたって事業を展開する西武グループだけに、実現可能なアイデアの幅は広そうだ。枠にとらわれない自由なアイデアが実現できれば、大企業がアイデアの構想段階から企業・個人と共に作り上げていくというスタイルは今後広がっていくかもしれない。
(取材・狐塚真子)