【片山恭一】グローバリゼーションは人間の世界からニッチを消した

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ゾウの鼻が長いのには、さまざまな理由がある

地球上にこれだけいろんな生物が暮らしているのは、地球環境が変化に富んでいるからである。砂漠、ツンドラ、森林、草原、海洋など、それぞれのエリアに多様な生き物が暮らしている。しかも場所によって氷点下何十度のところもあれば、平均気温が30度を超えるところもある。

自然はニッチの空白をそのままにしておかない。日本ではオオカミが害獣ということで駆除された。おかげで日本列島は草食動物のニッチになった。ライオンが捕食者(人間)のいないサバンナなどで暮らしているのも、そこが彼らにとってのニッチだからだろう。グローバリゼーションは人間の世界からニッチを消してしまった。おのずとぼくたちは適者生存のシビアな世界を生きることになっている。

地球における生息環境が多様であるせいか、動物には奇妙な形状をしたものが多い。神が万物を創造したとすれば、かなり遊び心にあふれたお方であると思われる。あるいは進化の過程で選択され、出来上がったものだとすれば、自然淘汰(とうた)のデザイン感覚は、不思議を通り越して奇想天外と言うほかない。

短絡的と言ったほうがよい場合もある。高いところにある木の葉を食べるためにキリンの首が長くなったという進化論の説は、発想としてかなり軽率ではないだろうか?ゾウの鼻が長くなったのも、進化論的に見ると行き当たりばったりだったようだ。

もともとゾウの鼻は短かった。しかし弱肉強食の世界では、他の動物に食べられないための工夫をいろいろ凝らさなければならない。足を速くする。空を飛べるようになる。かじられても平気なように皮膚を鍛える。体を大きくするというのも、安易だけれど一つの方法ではある。

嗅覚のよい動物というと、ぼくたちはイヌを思い浮かべる。けれども、ある研究によれば臭いの識別能力を決定する嗅覚受容体の数はゾウがいちばん多いそうだ。行き当たりばったりではあるが、ゾウの鼻はだてに長いわけではないようだ。

いろいろ文句はつけたけれど、あの威風堂々としたデザインはやはりすばらしい。もしゾウの鼻が短かったら、きっと間抜けに見えるだろう。そして子どもたちが動物園に行く楽しみは半減するに違いない。

日刊工業新聞2020年8月28日

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