超高速大容量に期待はあるが…消費者が「5G」に不安な理由

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白書の調査では、消費者が通信料金に不安を抱く実態が浮き彫りになった(5Gサイン〈手前〉と5Gビジョン、NTTドコモ)

第5世代通信(5G)に対する不安で最も多かった回答は「通信料金が高くなる」の61・7%―。総務省がまとめた2020年の情報通信白書に記載した調査結果では、消費者が5Gの通信料金に不安を持つ実態が浮き彫りになった。5Gを用いた各種有料サービスを利用したいと答えた割合も軒並み15%以下に留まる。ただ、企業の3分の2は5Gに関心を持っており、消費者や利用企業が納得できる料金体系の確立が普及のカギを握る。

総務省が3月に行った「データ流通環境等に関する消費者の意識に関する調査研究」によると、5Gに対する不安点では「端末料金が高くなる」と答えた割合が49・7%と2番目に多かった。「使えるエリアが限定される」(27・9%)、「セキュリティー」(27・3%)と答えた割合も高かった。

一方、5Gに対する期待で最も高かったのは「通信速度が速くなる」で64・3%。現行の4Gと比べてデータ通信速度が約100倍となる1秒当たり10ギガビット(ギガは10億)、伝送時の遅れが10分の1となる1ミリ秒(1000分の1秒)という性能への期待感の高さがうかがえる。

2番目に多かったのは「通信料金が安くなる」(52・2%)。現状では、NTTドコモの5G料金プラン「5Gギガホ」はデータ容量無制限で月4480円(消費税抜き)からと現状の4Gプラン「ギガホ」より500円高い。

料金の安さを求める消費者の傾向は、5Gを用いたサービスの利用意向調査でも浮き彫りになった。「スタジアムやホールで観客が撮影した動画がリアルタイムで共有され、現場の一体感を遠隔地でも楽しめる機能を有料で利用したい」と答えた割合は5・3%、「仮想現実(VR)ヘッドセットなどを用いて高画質な3次元(3D)パノラマ映像から視点を自由に切り替えながらスポーツ観戦できる機能を有料で利用したい」と答えた割合も5・6%にとどまった。無料であれば利用したいと答えた割合は、それぞれ51・4%、45・7%だっただけに、通信料金以外で支払う必要がある付加的な料金の支出には慎重と言える。

「旅行先など遠方で医師の診断を受ける際、地元のかかりつけの病院からカルテ等を送ってもらえる機能を有料で使いたい」と答えた割合も11・9%にとどまった。ただ、新型コロナウイルス感染症拡大以前の調査結果のため、コロナ禍の状況では「医療」「教育」関連機能を有料でも使いたいユーザーは増えそうだ。

総務省がまとめた「デジタルデータの経済的価値の計測と活用の現状に関する調査研究」では、5Gに対する企業の意識調査を行った。5Gへの関心の有無については66・7%が「関心がある」と回答。業種別では、製造業が最も関心が高く、74・8%が「関心がある」と答えた。以下、情報通信業の74・5%、商業・流通業の63・4%が続く。

関心のある5Gの特徴を尋ねた質問では「超高速・大容量」が69・4%で最多だった。以下、「超低遅延」の52・2%、「多数同時接続」の41・7%となった。

企業が想定している5Gの活用場面について聞いた質問では、製造業では「屋内の生産、製造現場」、情報通信業やサービス業では「サービス開発」、エネルギー・インフラでは「屋外の生産、製造現場」が最も多かった。

■工場監視・作業支援・自動化 製造現場スマート化

情報通信白書では、産業別の5G実装効果をまとめている。製造業では三つの利用事例を示した。このうち「工場内のモニタリング」では、工場内に設置した高精細カメラからの映像を5G経由で伝送することにより、リアルタイムで設備や機器の状況監視を行うことができる。IoT(モノのインターネット)センサーによる工場の“見える化”は従来から行われているが、5Gの超高速大容量化で4K・8Kなどの高精細映像の伝送が可能となり、より正確で精緻なモニタリングを可能にする。

住友電気工業とソフトバンクは、5Gを用いて工場内のカメラやセンサーから設備の稼働状況や作業者の動きをリアルタイムに収集する実証を行う。データを人工知能(AI)で解析することで、設備や作業者の異常を自動検知する検証も実施する。

「作業支援」では、拡張現実(AR)ゴーグルなどを使いながら補完的に現場作業を円滑に行えるようにし、遠隔からの指導にも活用できるようにする。オムロンとNTTドコモ、ノキアグループが行う実証では、設備データや作業者の作業動線を撮影した映像データなどを収集し、AIで解析。熟練者との違いを作業者へリアルタイムにフィードバックすることで生産性の向上を目指している。5Gで生産設備を無線ネットワーク化し、オムロンの自動搬送ロボを組み合わせることで、工程ごとに切り離した「レイアウトフリー生産ライン」の構築にもつなげる。

レイアウトフリー生産ライン(イメージ)

「設備等の自動化」では、工場自動化(FA)、プロセス自動制御(PA)技術を5Gによりワイヤレス化することで、IoT(モノのインターネット)による生産ラインからのビッグデータ(大量データ)収集、生産設備の遠隔制御を実現する。

三菱電機とNECは5Gを介したFA―ITソリューション「e―ファクトリー」の高度化に向けた実証を進める。工場内で稼働する複数の無人搬送車のスマート運用、工場内の情報と公衆網の情報をつなげてサプライチェーン(供給網)全体を最適化し、需要変動に臨機応変に対応できるスマート生産の実現につなげる。製造業における5Gの活用は技能伝承に加え、労働力不足の解消にも役立ちそうだ。

日刊工業新聞2020年8月11日

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