二人乗りのスポーティーなEV開発を手がける岡山の技術者集団
自社製品部門拡充、EVも開発
コアテック(岡山県総社市、藤井茂社長、0866・94・9000)は、自動車の生産ラインの自動化設備などを設計から生産まで手がける。社員の半数近くが設計者という技術者集団だ。近年は自社製品部門を拡充し、新事業では電気自動車(EV)の開発も進む。藤井社長に事業の展望などを聞いた。(大櫛茂成)
―デジタル化の進展などで設計部門はどう変わりましたか。
「大学時代はT定規で図面を書き、入社後にドラフターでの設計を経験し、画期的だと思った。今の人はCADが当たり前で、便利とも思わないのではないか。CADの普及によって、誰でもきれいに図面を書けるようになった。一方で、徐々に考える仕事が少なくなったように思う」
―要因は何ですか。
「過去のデータがCADに蓄積され、そのデータを組み合わせれば設計できるようになった。結果として似たような機械が増えた。そこで社内に『技術のコアテックを再構築しよう』と言っている」
―具体的にどういうことですか。
「主力は自動車向けを中心としたファクトリーオートメーション(FA)事業。ほかにエコロジービジネスと自社製品がある。次の世代のために新しいものを残したい。サーボプレスは2000年頃から始め、当初は苦しかったが、今では利益を出せる事業になった。新規参入は簡単ではないが、少しずつやっていかないと間口が広がらない」
―今春、岡山県工業技術センターと共同開発したナットランナーを公表しました。
「以前に岡山県の次世代自動車プロジェクトへ参加し、インホイールモーター型EVを研究開発した。具体的にモーターの仕様を決め、解析し、同じサイズで高効率、高回転を目指した。このモーターを当社のナットランナーに採用した」
―EV開発も進行中です。
「プロジェクト終了後、インホイールモーターは戸田レーシング(岡山県矢掛町)が引き継ぎ生産している。同モーターを搭載した2台目のEVを開発中だ。2人乗りの乗って楽しいスポーティーなEVを目指している。年内にナンバープレートを取得し、公道を走れるようにしたい」
【ポイント/「技術のコアテック」再構築】
コアテックは岡山地方発明センターの事業部門が独立する形で1972年に設立した。現在の社員数は約250人で、100人以上が設計部門に所属する。藤井社長自身も入社以来、設計部門一筋のエンジニアだ。EVの事業化は同社にとって大きな転機になる。一方、さらなる技術改良や行政からの認可取得に加え、最も大きな壁となる量産コストの低減など課題も多い。「技術のコアテック」再構築に向けた挑戦が始まっている。