コロナ後は…「ロボットシステムインテグレーターこそが次の世界を作り上げる」

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コロナ収束後はオフィスや工場に人を集めずに事業を存続するため自動化や遠隔操作技術がますます求められる

ロボットシステムインテグレーター(SIer)業界で、新型コロナ収束後を見据えた動きが活発だ。足元では新型コロナの影響はあるものの、収束後はオフィスや工場に人を集めずに事業を存続するため自動化や遠隔操作技術がますます求められ、SIerの活躍の場は広がる。FA・ロボットシステムインテグレータ協会の久保田和雄会長(三明機工社長)に現状と、収束後に求められるSIer像を聞いた。(聞き手・小寺貴之)

ー足元の状況は。
 「現在は受注残を抱え忙しい。さらにコロナ収束後を見据えて自動化の引き合いが増えてきた。工場への出勤者抑制と収束後の人手不足などを見越して、いまのうちに自動化の計画を進めようと動いている潜在的企業が多い。ただ対面の打ち合わせを自粛するなど、進め方を変えないといけない。テレビ会議で現場をつないで実地確認するなど、各社工夫して対応している」

ー協会の調査では84%が何らかの影響を受けているとの結果になりました。
 「影響はある。だが事業が止まっているわけではない。経営にダメージがあるわけでもない。商談では対面の機会を極力減らすなどの影響はある。だがこのコロナ禍であっても受注を増やしている企業もある。もともと政府の『ものづくり・商業・サービス補助金』が使いやすくなり、業界に追い風が吹いていた。自動化にむけて設計や計画の仕事が舞い込んでいる。アンケートでも、構想設計、詳細設計などの『設計』工程への影響は小さい。システムインテグレーターは設計にノウハウを詰め込む。これが競争力だ。コロナ禍でも付加価値を生んでいる部門は傷ついていない。むしろ潜在需要が大きく、全体としてはシステム構築業務は多忙が続いている。一方、甚大な影響があると応えた会社が25%あった。分析してみるとシステム構築以外の業務への影響が出ているようだ。協会として会員各社に対して気を配っていく」

ー現場作業を減らすとなると、働き方を変える必要があります。
 「制約の中で旺盛な需要に応えるために各社工夫している。現場を訪ねる人数をできるだけ減らすために、顧客の現場から技術者へ生中継しているケースもある。営業担当が現場や装置をカメラで撮り、会議室から技術者が現場をチェックする。音や振動、熱など現場に行かなければ感じられない要素はある。だが何が重要か分かっている技術者は、現場から聞き出して対応できる。今後。第5世代通信(5G)など技術が進めば映像の画質は向上し、センサーデータなど現場から送れる情報は飛躍的に増える。すでに温度や騒音はスマートフォンでも測れる。営業担当の役割や働き方は変わっていくだろう」

「同時にデジタルツインの利用も進む。例えばティーチングは現場と3Dデータを見比べてシミュレーションし、どの改善案が有効か検証する。遠隔でできる業務を増やし、現場に詰める時間を減らす。現場で汗をかいてきたティーチングマンも、オフィスワーカーのような職種になっていくだろう。システムインテグレーターには現場で培った蓄積がベースにある。ハードルは低くないが、コロナを機に開発が加速している」

ーアフターコロナで注目される技術は。
 「遠隔操作と一体となった自動化だ。この自動化への投資が次の時代の経済をけん引する。ロボットシステムインテグレーターこそが次の世界を作り上げるといっても過言ではない。収束の暁には一気呵成に攻勢をかける準備を整えていく」

久保田和雄氏

ーサービス面でも変化がありそうです。
 「当社では仮想現実(VR)空間でシステムを検証するバーチャルロボットセンターを運用している。各社、生産技術や品質管理など、得意技術と掛け合わせたサービスが出てくるだろう。一方で1から新しい技術やサービスを開発するのは簡単ではない。そのためにSIer協会がある。機械や電機、ソフトウエア、商社などさまざまな事業者が集まり、協力する場がある。足元では新型コロナの影響はあるものの、1社単独では難しいことはオープンイノベーションで進めていく」

ー大学では研究活動が停滞しています。今年の人材採用への懸念はありませんか。
 「コロナ禍を経験し、困難に立ち迎える学生が増えると期待している。制約があるほど、学生の自ら学んでいく姿勢が求められる。ロボットシステムインテグレーターは広範な先端技術を統合する仕事だ。押さえておくべき技術の範囲は広く、各技術の進歩は速い。技術者は一生勉強だ。学校を卒業した時点で即戦力になるかどうかよりも、しっかりと学び続けられるかどうかが重要だ。生活や授業、研究に制限がある中で、何ができたか、どんな工夫をして突破したか뗙。企業はその努力を必ず評価する」

ー協会で人材育成の動きも始まりました。
 「国立高等専門学校機構やロボットメーカーなどと『未来ロボティクスエンジニア育成協議会』を立ち上げた。SIer協会の会員は技術者養成拠点を全国で約30カ所ほどもっている。ここで学生や先生に、現場で使われている技術を紹介できる。産学連携で教育をアップデートしたい。またモノづくりへの興味を持ち続けてほしい。動画や漫画でロボットシステムインテグレーターの面白さを発信している。身近なものがどう作られているのか、その製造装置はどう設計されて作られたのか。技術に明るくなくても楽しめる内容になっている。今年の採用活動ではネット面接だけでなく、現場や技術者と中継して苦労とやりがいを伝える企業が増えるだろう。こうしたときだからこそ、学生と企業の距離が縮まると期待している」

【記者の目】

コロナ影響の調査では、25%が甚大な影響で、59%軽微な影響でした。こればコロナ禍のような大きな経済停滞でも、75%は影響は小さく済んでいるとも言えます。影響が出ているのは現場仕事で、システム設計など、システムインテグレーターの競争力であり、付加価値の源泉となる部分はあまり損なわれてはいません。外食などと比べて影響は小さく、手堅い自動化需要があります。ここで持ちこたえられれば次の成長にむけて攻勢をかけられます。

注意すべきはコロナ禍による労働移動です。例えば飲食店の働き手が、宅配の配達員になっていたりします。総菜などの食品工場も忙しいです。三品産業など人手不足で困っていた現場に、働き手が流入していると思います。短期的に人手不足が緩和され、目の前の仕事が増えると自動化の逼迫度や投資計画に影響が出ます。とはいえ、コロナ禍が収束して、また人手不足に苦しむのは困ります。飲食店なども、もう一度戻ってきてもらうために適正な給与を提示し、人件費は上昇すると思います。このとき忙しいシステムインテグレーターがつかまるのか、少子高齢化問題はいつまで先送りできるのか。コロナ禍で中長期の設備投資はどうなるのか。本当に難しい問題だと思います。


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日刊工業新聞2020年5月13日記事に加筆

COMMENT

小寺貴之
編集局中小企業部
記者

ロボットシステムインテグレーター業界はSIer協会ができたのが2018年。協会ができて初めての経済危機がコロナ禍でした。一企業が集められる情報は限られますが、協会として情報を集めて足元の状況を整理し、互いに協力できることを探す。そして教育機関など、同じように困っているところと収束後の業界像を共有する。国の産業振興策は一朝一夕ではできないため、危機対応に追われながら収束後の施策を仕込みます。協会として経済危機にすべき大切な活動ができているのではないかと思います。

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