製造業の水平分業はもう古い?日本のモノづくりが勝ち残る設計のエンジニアリングチェーン

サプライチェーンの分断リスクに備えよ

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写真はイメージ

経済産業省が製造業のエンジニアリングチェーンの強化を軸に新たな政策を検討している。地政学リスクや災害など不確実性が高まる経済環境の中で製造業が勝ち残るには、製品設計・工程設計力を底上げしてデジタル技術を効果的に活用し、変化に強い企業体質を構築することが不可欠と考えるからだ。経産省の中野剛志ものづくり政策審議室長に製造業が抱える課題と対応策を聞いた。

―製造業を取り巻く事業環境をどう見ていますか。
「不確実性が高まり先を見通しにくい。何が起こるか分からないことを前提に経営をしなければならない状況だ。企業や組織には変化に柔軟に対応し、自らを変革できる力『ダイナミック・ケイパビリティー』が求められている」

―製造業は水平分業が進み効率化した一方、グローバル化したサプライチェーン(供給網)は突如分断されるリスクにさらされています。 「GAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)などの巨大IT企業は電力や半導体などあらゆる事業を買収し、垂直統合を進めている。政治情勢や災害などの影響で世界に点在するサプライチェーンが分断されるリスクを回避するためだ。ここ10年は自前主義からの脱却が声高に叫ばれてきたが、変化が激しい事業環境下では自社で武器となる事業をより多く持っている企業のほうが勝ち残る可能性が高い」

―製造業が変化への対応力を高めるには。
「製品設計や工程設計を担うエンジニアリングチェーンの強化が不可欠だ。特に日本の製造業は生産部門と比べて工程設計部門の力が弱くなり、製造現場で設計変更や修正を行うなど後工程に負荷がかかっている」

「設計力を底上げし手戻りを少なくすればリードタイムを大幅に短縮できるため、事業環境の変化に対応しやすくなる。例えば製品サイクルが5年から2年になればずっと先が見通しやすくなり、リスクを減らせる」

中野剛志氏

―エンジニアリングチェーンを強化するにはどうすればよいですか。
「まずは設計部門の地位を高めることが重要だ。彼らの力を底上げできれば人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)などデジタル技術の活用がより効果的に広がる。結果、設計から生産、販売までの緊密な連携が可能になる。アジャイル開発など、不確実性の時代に合った戦略が立てやすくなる」

―経産省はどのような政策を打ち出しますか。
「毎年春に発表するものづくり白書などを通じて、これからの製造業の競争力を左右するのはエンジニアリングチェーンの強化にあるというメッセージを発信する。我々が音頭を取って経営者らに情報提供して理解を求め、IT投資など必要な対策を促していきたい」

【記者の目/IT投資・人材育成急務】

不確実性が高まり、製造業は規模の追求など従来の常識が通用しない事業環境に直面している。変化への対応力を高めるにはこれまで主流だった製造現場の生産性向上に加え、設計力を底上げするためのデジタル技術の導入もカギを握る。厳しい環境ではあるが、将来を見据えたIT投資の拡大やIT人材の確保・育成が急務だ。(下氏香菜子)

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