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企業の宣言相次ぐ「森林破壊ゼロ」、生物多様性の潮流になるか

国内外で「森林破壊ゼロ」を目指すと宣言する企業が増えている。企業グループ「企業と生物多様性イニシアティブ(JBIB)」によると味の素、花王、積水ハウスなど4社が宣言した。気候変動対策では再生可能エネルギーでの事業運営を目指す「RE100宣言」や温室効果ガス排出ゼロの「脱炭素宣言」が相次ぐ。生物多様性でも森林破壊ゼロ宣言が迫られそうだ。(取材=編集委員・松木喬)

世界各地の森林が開拓され、木材や紙、パーム油を供給するための農園になっている。大豆畑や牛を育てる牧場にも転換され、九州の面積ほどの年330万ヘクタールの森林が世界で失われている。そこで企業に対し、生態系を守って生産した商品を調達して、森林破壊を防ぐように要請が強まっている。

JBIBは生物多様性保全を推進する企業グループ。4―5月に会員42社にアンケートし、回答した30社のうち4社が森林破壊ゼロを宣言していた。味の素は環境に配慮した生産が確認できたパーム油と紙を調達する目標を設定した。パーム油は食品の原料、紙は商品パッケージに使っている。積水ハウスも独自指針を設定し、生態系に配慮して生産した木材調達に取り組む。

森林保護の国際団体のフォレストトレンドは、森林破壊ゼロに貢献する企業の情報を収集し、ウェブサイト「サプライチェンジ」で公開している。日本からは34社の掲載があり、イオンや大日本印刷、凸版印刷、大和ハウス工業、富士通のほか、ミマスクリーンケア(東京都葛飾区)、玉の肌石鹸(同墨田区)などの非上場企業の目標も公開している。

一方、世界全体では米アップル、米ウォルマート、米インテルなど約500社が掲載されており、日本企業には出遅れ感がある。

国連は生物多様性保全の次期世界目標の草案で、2030年までに生態系の損失実質ゼロを目指す方針を打ち出した。足立直樹JBIB事務局長によると「森林破壊ゼロを目指す海外企業は、大胆な目標や政策を求めている」といい、経済界も次期世界目標を支持している。

温暖化対策の国際ルール「パリ協定」が15年に採択されると、再生エネ100%化を目指す企業連合「RE100」への参加や脱炭素宣言が環境先進企業の証となった。生物多様性でも森林破壊ゼロ宣言が潮流となる可能性がある。足立事務局長は日本企業にも追随してほしいが「遅れが発生する」ことを懸念する。

日刊工業新聞2020年7月28日
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
今年は生物多様性のスーパーイヤーと言われていました。ポスト愛知となる次期世界目標の決定を控え、前哨戦で盛り上がるはずだったので。新型ウイルスでトーンダウンですが、国立環境研究所の五箇先生がコロナ後の日本社会を考える勉強会を主導するなど、じっくりと考える時間ができたと思います。森林破壊ゼロを目指すと宣言する企業は増えるでしょうか?

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