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週4日勤務やタブレット端末導入で進む、日興証券の働き方改革

週4日勤務やタブレット端末導入で進む、日興証券の働き方改革

採用公式ページより

週4勤務、30歳以上対象に

日興証券が働き方改革を加速している。社員の仕事と私生活の両立に向けて新たな人事制度を運用し、30歳以上の社員を対象に週4日勤務を認めている。タブレット端末を駆使した営業スタイルも定着し、顧客との関係強化につなげている。証券業界ではビジネスモデルや業務の在り方を抜本的に見直す動きが広がっており、勤務様式の改善もその一環だ。同社は率先して、社員が能力を発揮できる就業環境を整える。(孝志勇輔)

新人事制度により、管理職を除く30歳以上の社員が週4日勤務の対象となった。「仕事以外の悩みを解消し、できるだけ仕事に専念してもらう」(SMBC日興証券)という。通常勤務時の8割の月給を支払うほか、30代に適用する場合は育児と介護に限定する。働き盛りの一方で、私生活も慌ただしく負担がかかることが少なくない。少子高齢化を踏まえ、社員の立場に立った方針といえそうだ。

社員の自律的なキャリア形成やスキル向上を支える休暇も用意している。海外の大学進学や語学留学、特定非営利活動法人(NPO法人)での活動などの際に取得できる。入社以降4年目以降の社員が対象で、休暇期間は原則6カ月―3年間。処遇は無給となる。副業も併せて解禁した。

また、リーダーシップや社会課題の解決力を養うために、社会貢献活動への参画を後押しする。「プロボノワーク」と呼ばれる取り組みで、社員が業務時間にチームを組んでNPO法人などを支援できるようにした。金融業界で業務時間の一部で同活動を認めるのは珍しい。

同社が選定したNPO法人などの活動の成果が高まることを目指す。業務時間外でプロボノワークに取り組む場合、「夜間や週末により時間が制約され、成果を出すのに時間がかかってしまう」(同)という。プロボノワークがボランティアと同様に無償での参加が前提だが、業務で培った知見やスキルを活動に生かすことが求められる。普段とは異なる就業環境で社員の就労や貧困への問題意識を高めるとともに、プロジェクト管理なども経験してもらう。

働き方改革が進むことで証券業界の営業スタイルも変わりつつある。同社の営業担当者もタブレット端末を使いこなしながら顧客との接点を深めている。家族構成のデータを基に将来の資産状況をシミュレーションしたり、保険の契約手続きをしたりしている。

多くの書類を持ち歩かなくて済み、顧客から想定外の要望が出てきたとしてもタブレット端末上で必要な資料を探せる。顧客本位の営業に向けて丁寧な説明が求められるのはもちろんだが、タブレット端末により分かりやすく示せるメリットは大きい。

証券各社が働き方改革を重視しており、同社も制度面の見直しや情報通信技術(ICT)の活用などを進めている。社員が働きがいを感じる就業環境により、人材の底上げにつながりそうだ。

日刊工業新聞2020年7月29日

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