ペロブスカイト太陽電池が家庭に来る日は?研究の道のり

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4000時間超の耐久性を誇る半透明ペロブスカイト太陽電池

高効率化へ課題解決

【コスト減期待】

毎月届く「電気ご使用量のお知らせ」の中に、再生エネ賦課金という欄がある。日本の再生可能エネルギー普及を強力に後押しするための原資となるものだが、2020年5月現在、使用した電力量(キロワット時)×1キロワット時当たり2・98円となっている。

標準家庭(260キロワット時以下)なら、毎月800円弱、年間では約1万円の負担となる。地球温暖化を防ぐために、再生可能エネルギーのさらなる普及が必要だが、一方で利用者の負担軽減も重要な課題である。

この相反する課題の解決を目指し、私たちの研究グループでは次世代太陽電池として注目されるペロブスカイト太陽電池の研究開発を進めている。世界初のペロブスカイト太陽電池は、2009年桐蔭横浜大学の宮坂研究室で作られた。溶液プロセスや蒸着プロセスなどさまざまな方法で作製でき、将来的には安価で軽いプラスチックシート上へ連続印刷するように作製できれば、現在主流のシリコン太陽電池に比べて大幅なコストダウンが期待できる。

【数千超える試作】

2012年ごろには効率10%を超えて一気に注目され、世界中の太陽電池研究者に大きなインパクトを与え、効率の向上を目指した熾烈(しれつ)な開発競争が始まった。その結果、0・1平方センチメートル未満の素子では25%を超え、1平方センチメートル素子でも21%が実現している。しかし変換効率の向上を追う一方で、高いプロセス温度(500度C程度)や耐久性など実用上の課題は置き去りとなっていた。

そこで我々のグループでは、実用上の問題点に着目しこれまで数千個を超える試作を繰り返し検証してきた。そして、新規インターフェース材料の開発により4500時間以上の連続発電記録も達成するなど、一定の条件下なら、ペロブスカイト太陽電池はすでに使えるレベルにあることを示した。

【研究急ピッチ】

さらにペロブスカイト層の結晶化に独自の手法を開発し、100度C未満のプロセス温度で変換効率を17%(1平方センチメートル)まで向上させることにも成功している。しかし、シリコン太陽電池は79平方センチメートルで26・7%を記録するなど、ペロブスカイト太陽電池はまだ素子面積・耐久性・作製コストなどに課題は残る。

すでにこれらの課題解決を目指して企業との連携も始まっており、全ての家庭に設置できるような軽量・高効率な次世代太陽電池の実現を目指し、再生エネ大量導入時代に間に合わせるべく研究を急ピッチで続けている。

◇物質・材料研究機構(NIMS)エネルギー・環境材料研究拠点 太陽光発電材料グループ 主幹研究員 白井康裕
06年米ライス大学大学院博士課程修了、PhD。NIMS若手国際研究センターICYS研究員を経て、10年より現職。

日刊工業新聞2020年7月29日

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