日産「キックス」が時速80km以下でほぼエンジンを動かさない秘密

開発責任者、山本陽一氏が語る

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「キックス」は走りの力強さだけでなく、気持ちよさにもこだわって開発

新型「キックス」はスポーツ多目的車(SUV)に初めて独自のハイブリッド車(HV)システム「eパワー」を搭載した。既存のeパワー搭載車「ノート」などと比べ、走りの力強さだけでなく、気持ちよさにもこだわって開発した。

力強さではeパワーの制御を徹底的に磨き上げ、出力は従来比で約20%向上した。eパワーはエンジンを発電用のみに使いモーターで駆動する。これまで販売したノートなどから収集したデータをビッグデータ(大量データ)として活用。従来と同じエンジンやモーターを採用しながら、電池やエンジン、モーターの連携を細かく制御して出力を高めた。

エンジンの作動頻度を大幅に改善して快適性も高めた。従来は充電状況に応じてエンジンを動かしていたが、周辺の温度、路面の環境、ペダルの踏み方などのデータを解析して細かく制御する手法に改めた。この手法でも先ほどのビッグデータを活用して緻密な制御に生かしており、時速80キロメートル以下ではほぼエンジンを動かさずに静かな走行を実現した。

車台も大幅に見直した。床下やサスペンション回りの補強を徹底し、路面やeパワーの出力に対する入力を受け止め、車体に分散させる構造とした。エンジンの出力と足回りの補強のバランスを取ることで、スムーズな走り出しや高い静粛性を備えた商品に仕上がった。洗練されたデザインを維持しながら、後席や収納スペースを最大化。大人がくつろげる室内空間やMサイズのスーツケースを4個積載できる広さも実現した。

キックスはeパワーのアジア展開の一環もあり、タイで生産して輸入する。eパワー搭載車の海外生産はタイが初めてで、品質確認を徹底した。開発では従来よりも多くの車両を生産し、日本でも品質に問題がないかを確認しながら念入りに進めた。量産段階では、現地以外に追浜工場(神奈川県横須賀市)でも最終の品質確認と検査を2重に実施して出荷する工程を取り入れ、不具合を出さない万全の体制を構築した。

【記者の目】
電気自動車(EV)のような走りが特徴のeパワーや、アクセルペダルのみで加減速できる「ワンペダル」は、ユーザーに新たな運転体験を与え、その驚きが販売を後押しする。人気の小型SUVセグメントへのeパワーの投入は試乗機会の拡大が期待される。対面での接客機会が限られるなか、驚きの輪を広げる工夫や販売戦略が重要になりそうだ。

(西沢亮)
ハイブリッド車システム「eパワー」

日刊工業新聞2020年7月20日

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