部品メーカーからの調達価格引き下げ見送り、トヨタの深謀遠慮

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部品価格の引き下げは見送ったが、原価低減は継続する(トヨタの元町工場=愛知県豊田市)

トヨタ自動車が取引先部品メーカー各社に対し、2020年度上期(4―9月)の部品価格の引き下げ要請を見送る方針であることが明らかになった。新型コロナウイルス感染拡大の影響で上期の価格改定を7月まで先送りしたが、部品メーカーの経営状況を考慮し、上期は値下げを求めないことにした。トヨタは08年のリーマン・ショックや11年の東日本大震災直後も、部品価格の改定を見送った。コロナ後を見越し部品メーカーの収益改善を後押ししながら、原価低減を進める考えだ。

トヨタと部品各社は1年に2回、部品の価格改定を交渉し、取引先の部品の競争力や経営状況を判断して引き下げ幅を決めるのが通例だ。足元ではコロナ禍に伴う世界的な新車需要の低迷を受け、国内工場の減産が続いている。部品各社の財務状況などを鑑み、上期の引き下げ要請の見送りを部品メーカーに伝えた。

トヨタと1次取引先の価格交渉が据え置きになったことで、2次・3次取引先以下の価格交渉も同様の着地となるもよう。1次取引先の幹部は「見送りは率直にありがたい。トヨタは2次・3次メーカーの経営状況を憂慮していたこともあり、こうした結論になったのだろう」とみる。

20年度下期(10月―21年3月)の対応については、生産台数の動向をみて判断する方針。7月の生産計画は当初計画比1割減を見込むなど、国内生産は回復局面に入っている。ただ、部品メーカーからは「秋以降の生産見通しは不透明なところがあり、下期も見送りを望むのが正直なところ」との声も聞かれ、トヨタは難しい判断を迫られそうだ。

トヨタにとって部品価格の引き下げを含めた原価低減は、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)投資を続ける上で生命線となっている。原価低減で生み出した原資をCASE投資に回す好循環で、開発競争を勝ち抜く構え。減収減益を見込む21年3月期も、研究開発費は前期と同水準の1兆1000億円を計画する。部品メーカーの業績回復と、原価低減の推進をいかに両立させるか。コロナ後を見据え、調達戦略の手腕が試される。

(取材=名古屋支社・長塚崇寛)
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日刊工業新聞2020年6月24日

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