蛇腹構造で顔の負荷減、新しい人工呼吸器マスク開発へ

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蛇腹構造により小さな力で顔に密着する

iDevice(大阪府豊中市、木戸悠人社長、06・6319・8756)は、患者の顔への負荷を軽減できる人工呼吸器用マスクを開発した。蛇腹構造を採用し、小さな力で密着する。既存の硬いマスクによって顔を圧迫し、皮膚に傷が生じるのを防ぐ。臨床工学技士でもある木戸社長が医療現場の課題に着目し開発した。現在は素材や形状を試作中で、2021年ごろの発売を目指す。

傷をなくす

人工呼吸器の中には専用のマスクを介して空気を送り込むものがある。空気の漏れを防ぐためマスクを顔に強く押しつけることで、鼻や頬の周辺に褥瘡(じょくそう)と呼ぶ傷が生じる問題があった。木戸社長は「この傷を何とかしたかった」と開発の意図を明かす。

新型マスクは蛇腹の厚みを部分的に変え、鼻や口にあたる部分は薄く、頬にあたる部分は厚くした。この構造は顔の造形や大きさに左右されないメリットがある。既存の人工呼吸器用マスクは、患者一人ひとりに合わせてサイズ調整やフィッティングが必要で手間がかかっていた。

「(新型マスクは)在宅で人工呼吸器を使用する際も使いやすい」(木戸社長)と強調する。従来のマスクは力がない高齢者が自力で顔に固定することが難しかった。開発品は風邪の季節に使うマスクのように簡単に着脱できるという。

今後は在宅用と医療機関用の2種類を投入する予定。前者は使い捨ての紙製、後者は洗浄して再利用できるシリコン製を検討する。医療機関用は既存品と同じ価格帯の1万―2万円を想定し、「安いのに良いという衝撃を医療現場に届けたい」(同)と意気込む。国内発売した後、海外展開も目指す。

事業化を模索

人工呼吸器を操作する臨床工学技士として働いていた木戸氏は3―5年前に新型マスクのアイデアを思いついた。医療機器メーカーにこのアイデアを持ち込んだが検討されなかった。事業化の方策を模索する中、18年末に大阪府臨床工学技士会が主催するセミナーで、mediVR(大阪府豊中市)の原正彦社長に出会った。

初期の試作品は紙を折って作成した

同社は仮想現実(VR)を使ったリハビリシステムを提供する。原社長は島根大学地域包括ケア教育研究センターの客員教授も務める。セミナー終了後、木戸氏がマスクのアイデアを説明。「(蛇腹構造のマスクという発想は)非常に面白いと思った」と原社長は振り返る。そこで医工連携のため設立したiDeviceを木戸氏に譲り、マスクの本格的な開発が始まった。

近年、同社のように医療従事者が事業を興す医工連携は増えている。5月には臨床工学技士の団体が大阪の中小企業に働きかけ、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐフェースシールドの生産を依頼したこともあった。

背景にはウェブセミナーによるニーズの周知や、クラウドファンディングによる資金調達など、医工連携の手段の多様化があげられる。現場のニーズをよく知る医療従事者が主役の医工連携が今後、さらに増えそうだ。

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