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「危機感が足りない」日産の構造改革に部品メーカーの不満くすぶる

生き残りへ具体性に欠ける内容
「危機感が足りない」日産の構造改革に部品メーカーの不満くすぶる

調達方針の見直しにも言及した日産の内田社長(右)

日産自動車が構造改革に向け動きだした。5月に示した中期経営計画でこれまでの拡大路線の失敗を認め、着実な成長を果たす方針を示した。一方、規模追求に貢献しようと事業を拡大してきた自動車部品メーカーも日産と同様に苦境に立たされる。「妥協せず覚悟を持って取り組む」(内田誠日産社長)。危機感を共有する部品各社は日産の改革への決意が行動で示されることを期待する。

「自動車メーカーを選べる立場ではない」。日産との取引が多い部品メーカー首脳は日産が開いた2020年3月期決算会見の様子を見守った。6700億円を超える巨額赤字を計上した決算と共に注目したのが中期経営計画。自動運転など先端技術を巡り、異業種を含めた大競争時代を迎える自動車業界。日産の行く末は前途多難だ。しかし「(日産の)生き残りへの強い危機感には物足りなさを感じた」(部品メーカー首脳)と振り返る。

日産は構造改革で生産能力を23年度までに現状から20%程度削減し、年540万台体制にする方針を示した。しかし、19年度の販売実績は479万台。20年度の世界の新車需要は、新型コロナウイルスの影響で前年比約20%減を予想するなか、アナリストらから追加の生産能力削減が必要になるとの指摘もある。

こうした見方に、日産との取引が多い別の部品メーカー首脳は「何とか体制を維持していくには(年産能力540万台が)どうしても必要だ」と違う見方を示す。改革ではスペインの工場閉鎖など強い抵抗が見込まれる一方、1年半に12の新型車を積極投入して販売回復にも取り組む方針。前述の部品メーカー首脳は経営陣が「萎縮して守るだけでなく、販売を両立させる覚悟を示した」と評価する。

「アグレッシブな台数を掲げて進めたことに大きな反省点を持っている」。日産の内田社長は会見で、規模拡大のため部品メーカーに海外進出も含め協力を求めたが、目標の販売台数を達成できず、各社に投資負担を強いる結果になったことを謝罪。新興国を中心に一部事業で撤退を表明し、東南アジアや南米では連合を組む仏ルノーや三菱自動車と連携する方針を示した。しかし具体性に欠け、部品各社には不安と不満がくすぶる。

「技術の領域ではサプライヤーに対する発注のやり方を見直す時期にきている」。内田社長は調達方針の見直しにも言及。部品メーカーの意見も踏まえて改善を進める意向を示したことに各社は日産の変化を感じ取った。

これまで部品各社は設備投資を決断して、次の受注を獲得するため、厳しい原価低減の要求にも食らいついてきた。日産が持続的な成長へとかじを切ったことで、上記2社とは別の日産との取引が多い部品メーカー幹部は「中長期で関係を深めて部品の付加価値を向上し、固定費を安定して回収できる環境を築ければ」と期待を示す。

日刊工業新聞2020年6月8日

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