“師匠”が残していったサプライヤーとの信頼関係、日産新社長は死守できるか

調達畑のエースたちが3トップに

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内田新社長の大きなミッションはサプライヤーの力を取り込んでいくこと
 

日産自動車は、内田誠社長兼最高経営責任者(CEO)が率いる新経営体制を発足した。元会長カルロス・ゴーン被告が逮捕され、後を引き継いだ西川広人氏も報酬問題で社長兼CEOを辞任するというトップ人事の混乱を経ての再スタートとなる。日産には業績回復や次世代技術への対応、企業連合の安定化など課題が山積する。立て直しにはサプライヤーとの関係を強化していけるかが問われる。

 

日産の新経営体制の特徴の一つは「若返り」だ。内田社長兼CEOは53歳、新たに最高執行責任者(COO)に就いたアシュワニ・グプタ氏は49歳、副COOに新任した関潤氏は58歳。新たな執行役9人の平均年齢は55・2歳と従来から約7歳下がった。

 

ゴーン被告の後を継いだ西川氏は、中期経営計画が終了する2022年度までトップを務める腹づもりだったとみられるが、報酬不正問題で9月に辞任に追い込まれた。日産幹部は「内田氏、関氏ともに次世代のエースだった。結果的に彼らの時代が早く来た」と解説する。

 

内田氏、グプタ氏、関氏には共通の“師”がいる。調達畑が長く、直近では社長・CEO代行とCOOを兼務した山内康裕氏だ。内田氏はルノーとの共同購買事業に携わり、関氏は購買と関係の深い生産畑を歩んだ。そうした中で山内氏の目にとまり、「山内氏の推薦で(最高意思決定機関の)エグゼクティブ・コミッティ(EC)メンバーに入った」(日産関係者)。グプタ氏もルノー・日産の共同購買事業で山内氏の薫陶を受けたという。

 

日産は「販売力が弱い割にコスト低減要求は厳しい」(独立系サプライヤー幹部)。部品メーカーには不満が渦巻くが「フォロー役の山内氏がルノーとの取引を仲介するなどしてつなぎ留めてきた」(日産OB)。「無愛想だが実は面倒見が良い」(関係者)という山内氏がサプライヤーとの距離を縮めてきた面はある。

 

日産は生産合理化と並行して、20年度からは新車投入を積極化する。スムーズな計画実行にはサプライヤーの主体的な協力が欠かせない。また「CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)」への対応が不可欠となる中、サプライヤーの重要性が高まっている。

 

CASE開発には、ITなど異業種の知見も必要になり手間もコストも膨大になる。自動車メーカーはCASE分野に経営資源をシフトし、代わりに従来の「走る・曲がる・止まる」の技術領域をサプライヤーに任せる流れが強まっている。

 

日産には短期の経営再建、長期のCASE対応の両面で、サプライヤーと関係を強化する必要がある。内田社長は2日の会見で「ルノーやサプライヤーと仕事を進める中で、『尊重、透明性、信頼』の重要性を再確認した」と話した。この言葉にも沿う山内氏ら前経営陣の優れた部分は継承・発展させ、サプライヤーの力を取り込んでいくことが競争力回復の近道になる。

日刊工業新聞2019年12月4日

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