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3期ぶりに赤字転落の三菱自動車、コスト改革で試される危機感の本気度

東南アジアにより集中、北米・中国のリストラはどうなる?
3期ぶりに赤字転落の三菱自動車、コスト改革で試される危機感の本気度

全方位の拡大戦略は現実的ではない三菱自動車(同社公式ページより)

三菱自動車が拡大路線の見直しに着手する。投資効率を引き上げるため、主力の東南アジア地域により的を絞った事業戦略を組み立てる。2022年3月末までコスト改革を行い、その後は収益力改革に軸足を移すといったロードマップを描く。自動車業界で増大傾向の研究開発費にも切り込む。日産自動車と仏ルノーとの企業連合(アライアンス)による協業で三菱自の強みをどう最大化するかも問われる。

「全方位の拡大戦略は現実的ではない。強い危機感を持ってコスト削減を進める」。20年3月期連結決算で3期ぶりに当期損益が257億円の赤字になった三菱自。5月19日に電話会見した加藤隆雄最高経営責任者(CEO)は「選択と集中」を推し進めると宣言した。

20年3月期を最終年度とする中期経営計画では、同社の主力市場である東南アジアのほか、市場規模が大きい中国や北米などでの事業拡大も主な柱だった。ただ固定費の増大に対して満足な利益を生み出せなかった。売上高営業利益率6%超を掲げていたが、20年3月期の実績は0・6%と全く届かなかった。

新型コロナウイルス感染症が猛威を振るう前から利益率は芳しくなかった。19年3月期通期は4・4%だったものの、19年4―6月期は0・7%(前年同期は5%)に低迷。為替影響のほか、研究開発費や人件費の増大が重くのしかかった。そこにコロナ禍が追い打ちをかけた。

20年4―6月期決算時に公表予定の次期中計では、東南アジアを中心に据えた事業展開を鮮明にする方針。「コロナ前から当社の収益を上げられる地域・セグメントは限られる」(加藤CEO)と低収益領域は縮小させる。販売競争の激化などで赤字の北米や欧州地域のかじ取りが課題だ。

戦う市場や商品を絞り、メリハリの効いたコスト削減を進める。固定費は22年3月期に20年3月期比20%以上を削減し(削減額は1000億円規模)、16年3月期の水準に戻す。設備投資や人員配置、販売費も見直し対象だ。「まず2年間はコスト改革に集中」(同)した上で、22年4月以降は“収益力改革”を実行する。増額してきた研究開発費も減らす。現状は18年3月期比3割増の1300億円だ。東南アジアに集中することで、新車開発コストを抑える。

車業界ではCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)など「100年に一度」と言われる産業構造の変動に対応するため研究開発費は増加傾向にある。削減はリスキーにも映るが「自動運転もコネクテッドも当社独自では難しい。アライアンスを活用する」(同)ことで乗り遅れないようにする。

三菱自はインドネシア工場で日産の多目的車(MPV)を生産している。東南アジアの位置付けが三菱自の今後の成長を左右する。

(取材・日下宗大)
日刊工業新聞2020年5月27日

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