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グーグルの「20%ルール」が教えてくれる、在宅勤務のポジティブ心理学

立命館大学・高橋教授インタビュー
グーグルの「20%ルール」が教えてくれる、在宅勤務のポジティブ心理学

米マウンテンビューにあるグーグル本社「Googleplex」

在宅勤務の普及など新型コロナウイルスの流行を契機に企業の経営方針や人材管理の仕組みが変わり始めている。心理学の観点から企業経営や人材管理について研究する立命館大学総合心理学部の高橋潔教授に、企業の管理職や経営層に求められる人材管理や社内風土の改革について聞いた。

―新型コロナの流行をきっかけに多くの企業で在宅勤務の導入が進み、従業員を管理する仕組みが変わりそうです。企業の文化を変え、生産性を高めていくにはどのような取り組みが必要ですか。

「在宅勤務の推進は、従業員を押さえつけて管理するという企業文化を変えるきっかけになるかもしれない。『ポジティブ心理学』という分野が改革に役立つと考える。仕事に取り組む際、個人の感情を占める比率や、部署の雰囲気がポジティブ対ネガティブ比で3対1になると生産性が上がる」

「『契約をいつまでに何件取らないとペナルティーを課す』といったプレッシャーを与えながら人材管理する企業は多いようだ。ネガティブな感情は人に与える影響が強く、短期的な集中力を高める効果がある。一方、仕事の中で喜びや楽しみを感じられると、知識や人間関係が形成でき、長期的に状況に適応できるようになる」

「米グーグルは、勤務時間のうち4日は仕事のこと、1日は個人の関心事に注力して良いと定める『20%ルール』を社内に設けている。このような制度でポジティブな要素を適度に加えつつ、ネガティブな要素も残すことで中長期的に企業や人材が成長できる環境を作れるはずだ」

―新型コロナ収束後も在宅勤務を制度化する企業は多そうです。

「今後も在宅勤務の導入は続くだろう。今はその予行演習期間と捉え、慣れる意識を持つことが必要だ。ただし、『仕事の悩みを周りに相談できない』『家にいることでメリハリが付かず生産性が落ちる』など在宅勤務ならではの悩みもある。慣れない勤務形態で責任の所在が曖昧になると不安が生じる。個人の裁量を意識させ、毎日一定の成果物を提出する仕組みを作ることで解決したい」

―新しい働き方を取り入れつつも新型コロナに不安を抱える従業員に対し、経営層が対応しなければならない課題は何ですか。

「事業や経営全体の優先順位を明確にすることだ。収束まで従業員の健康や安全を第一に考えるなど優先順位を明示することで、従業員が安心して働けるようになる」

「現在の事業が行き詰まったときを想定し、新たな事業方針を定めるのも一つの手だ。大切なのは方針を数字で表すこと。『売り上げが何%低下したら店を閉める』など数値化すれば方針が明確になる」

【記者の目/可視化できない部分を変革】

新型コロナは景気に大きな打撃を与え、働き方を見直すきっかけになる。高橋教授が指摘するように、成果主義が進み時間単位の管理が減るだろう。「アフターコロナ」でも生き残り、さらに成長するためには企業風土や従業員の心理といった可視化できない部分を変えることが経営層に求められる。(森下晃行)

立命館大学総合心理学部の高橋潔教授

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