エアバスと共同開発した川崎重工の最新ヘリ、ホバリング機能の秘密

振動抑え防災や医療を支える

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「D―3」は5枚のブレードで振動を抑える

川崎重工業は欧エアバスと共同開発するヘリコプターの最新型を2020年度から納入する。高度の高い場所でのホバリング(空中停止)性能を高めるとともに、後部開口ドアから担架や貨物を搬出入しやすくする。あらゆる用途に利用でき、消防ヘリやドクターヘリとして一刻を争う現場に急行する。川重は民間で唯一の国産ヘリを幅広く納入して防災を支える。

現行機を改良した最新型「BK117 D―3」を20年度末に初めて納入する予定。ヘリコプター市場では中型機に位置づけられ、全長約13・5メートル。「全体的にコンパクトで狭い場所でも運用できる」(太田豊行ヘリコプタ営業部担当部長)という。最大速度が時速約267キロメートルで、航続距離が740キロメートル。山間部でもホバリングでき、遭難者などの救助に役立つ。

振動を抑制

豪雨による河川の氾濫や地震に伴うライフラインの寸断などで、取り残された被災者やけが人を搬送するのにヘリが欠かせなくなっている。BK117は後部開口ドアにより、担架を出し入れしやすい。しかもドクターヘリとして利用する場合、EMS(救急医療)装置を導入できる。医師や患者の付き添いなどの座席を4席用意。治療に使う薬剤や血液により、ヘリの内部が腐食するのも防げる。

ドクターヘリとしての導入も進んでいる

ヘリには振動と音が運用上の課題としてつきまとうが、「搬送時の振動が医療行為に支障を来してしまう」(同)可能性もある。そこで川重は上部のメーンローター(回転翼)システムを見直して、D―3はブレードを4枚から5枚に増やした。これにより振動を抑制できる。また同システムが整備しやすい構造で、作業期間の短縮につなげた。こうした急患への対応に必要な技術を取り入れることで、全国各地の医療機関への納入が進んでいる。

3Dで画面表示

消防・防災ヘリとしての活用も広がっている。機動性を高めることで障害物を回避するほか、消火タンクを取り付けて空中から放水する。悪天候による視界不良に対応するために、外部の状況の3次元(3D)イメージを画面に表示する機能も搭載した。操縦士が山や谷、川などの位置を認識しながら危険を予測できる。このほかにも後方のテールローターを覆う構造により、テールローターの接触によるトラブルを低減して、乗員の安全性を確保する。

川重はヘリの操縦士や整備士の育成も進めている。岐阜県内の工場に、コックピットの電子モニターを模擬したシステムや整備を実機と同様に体験できるシステムなどを導入した。一般的にヘリの操縦が航空機よりも難しく、経験が浅い操縦士も少なくないという。ヘリの設計思想に基づいた教育を受けてもらい、「安全運航につなげる」(同)ことを目指している。

国内では自然災害が相次いでおり、19年秋の台風19号による被害が発生した際にもBK117が出動した。今後も空から防災を支える。(孝志勇輔)

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