日産が独自HV生産に370億円投資する国
タイの工場に、海外展開の業績回復後押し
日産自動車はタイで独自のハイブリッド車(HV)技術「eパワー」ユニットの生産に乗り出す。投資額は109億6000万バーツ(約370億円)。サムットプラカーン県の工場で生産する。生産能力は非公表。同技術の海外生産はタイが初めて。eパワーの海外展開で新車の魅力を高め、業績回復を後押しする。
eパワーはエンジンを発電用のみに使い、モーターで駆動する仕組み。加速力などで電気自動車(EV)と同様の乗り味を実現したのが特徴。既に販売する日本では小型車「ノート」、ミニバン「セレナ」に搭載する。ノートの場合で販売の約3分の2をeパワー搭載車が占めるなど、販売を後押しする。
経営再建を目指す日産は、事業や投資効率の適正化のため選択と集中を進める。これまでにまとめた2023年3月期までの中期経営計画では、採算が悪化するモデルを中心に10%以上の車種の削減に取り組む。一方、eパワーやEVといった電動車は世界販売に占める比率を19年3月期の4%から23年3月期に約30%に高める目標を掲げ、成長のけん引役に位置づける。
タイでの投資はこうした戦略の一環で、近く小型スポーツ多目的車(SUV)「キックス」にeパワーを搭載して発売するとみられる。中計では仏ルノーや三菱自動車との企業連合による事業の効率化にも取り組む。三菱自は同国で約180億円を投じ、23年にもEVなど電動車の生産を計画する。連合で品ぞろえを拡充し、東南アジア地域の新車需要を積極的に取り込む。
日刊工業新聞2020年5月14日