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4ー6月は多くが赤字確実の自動車大手、回復のけん引役はリーマン後と同じか

「想像以上に中国市場で需要が回復している」
4ー6月は多くが赤字確実の自動車大手、回復のけん引役はリーマン後と同じか

昨年の上海モーターショーのトヨタ自動車ブース

新型コロナウイルス感染拡大の影響が、自動車メーカー各社に広がっている。新車需要の減少に伴う生産調整の動きが世界各地に波及。収束時期の予測が困難を極める中、業績悪化の懸念が強まっている。実体経済の収縮は2008年のリーマン・ショックを上回ると見る向きもある。

主力市場の北米では、ホンダが完成車と部品工場の生産停止期間を5月8日まで1週間延長。日産は米国の各工場の休止を5月中旬まで延ばす。5月4日から北米全14工場の生産再開を決めたトヨタも、通常の5割程度の稼働率で立ち上げる。当面は従業員の感染防止を最優先する手探りの稼働が続きそうだ。

国内ではトヨタが5月以降、5工場9ラインで生産調整を決めるなど、稼働停止に伴う減産台数を約7万9000台と想定。日産、ホンダ、SUBARU(スバル)、ダイハツ工業、スズキなど各社も稼働休止を迫られており、生命線である海外の新車需要の減少が国内生産にブレーキをかけている。野村証券の桾本将隆アナリストは「一部の高収益企業を除くと、多くの企業が20年4―6月期に営業赤字となる可能性が高い」と指摘。四半期ベースでは、リーマンの底だった08年後半から09年初頭の約2割という減少幅を「20年4―6月期は上回る公算が大きい」と予想する。

事業環境の悪化に備え、トヨタや日産は大手金融機関にコミットメントライン(融資枠)の設定を要請したもよう。新型コロナ問題の長期化を見据え、手元資金を手厚くする構えだ。

4―6月期決算は一部メーカーが赤字に転落する可能性も否定できず、業績回復が遅れれば不採算地域からの撤退や生産能力の適正化などに発展しかねない。需要回復期に財務基盤の盤石な企業が、他社の構造改革を横目にシェアを伸ばすなど、優勝劣敗が鮮明になりそうだ。

その中で自動車各社は、経済活動をいち早く再開させた中国市場に期待を寄せる。生産停止に追い込まれた日系メーカーは稼働を戻しつつあり、トヨタ幹部は「想像以上に中国市場で需要が回復している」との認識を示す。リーマン後に中国が世界経済のけん引役となった構図を再現できるか。世界最大市場の動向が注目される。

日系自動車各社にとって北米市場は収益の主要な柱の一つ。新型コロナの影響で、各社の米国事業は業績悪化への懸念が強まっている。日系メーカー5社の3月の新車販売台数は、前年同月比約4割減少。トヨタ自動車は約4割減り、ホンダやSUBARU(スバル)はほぼ半減した。

下落率が最も低かったトヨタが同37%減の13万5730台で着地した。このほか、ホンダが同48%減の7万7153台、スバルが同47%減の3万2611台、マツダが同42%減の1万5664台、三菱自動車が同52%減の9394台となった。四半期ごとに開示している日産自動車は、1―3月期の販売が前年同期比30%減の25万7606台だった。

国内販売はどうか。日本自動車販売協会連合会(自販連)と全国軽自動車協会連合会(全軽協)がまとめた3月の新車販売台数は、前年同月比9.3%減の58万1438台と6カ月連続で前年実績を下回った。登録車で経年車種が増えたほか、軽自動車で新型車の投入効果が落ち着いたことが響いた。新型コロナの影響も「徐々に出始めており、4月以降はさらに厳しくなる」(全軽協)とみている。

登録車は同10.2%減の37万4955台と、6カ月連続のマイナスとなった。マツダとダイハツを除く、6社の乗用車メーカーがマイナスとなった。自販連は「新型コロナの影響により、販売店の一部で来店者数が減っていると聞いている」とし、状況を注視していく構えだ。

届け出台数が減少している」とし、新型コロナの影響に懸念を示す。軽は同7.6%減の20万6483台だった。人気車種の先行受注が押し上げ効果となり「マイナスが小幅にとどまった」(全軽協)と分析。ただ「「3月末から届け出台数が減少している」とし、新型コロナの影響に懸念を示す。

2019年度の新車販売台数も同4.2%減の503万8727台と、4年ぶりにマイナスに転じた。台風や消費増税など複数のマイナス要因が重なったほか、3月単月では新型コロナウイルスの感染拡大の影響で各社軒並み減少。今期は新型コロナの動向次第で減少幅の拡大も予想され、好不調の目安となる500万台を5年ぶりに割り込む可能性もある。

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