登園自粛延長で家庭のストレス増大、保護者と保育園をつなぐ連絡帳アプリの可能性とは
新型コロナウイルス感染症の拡大で非常事態宣言が全国で延長が確実視される中、それに先だって保育園の休園や登園自粛も延長の動きが相次いでいる。
在宅勤務をしながら家庭保育に奮闘する世帯が多い中、先が見えず、思うように外出できないこともあり、ストレスや閉塞感が募りつつある家庭も多いだろう。生活習慣や食生活が乱れるといった声も聞く。また、保育士も各家庭がどのような状況なのか、確認しづらいのが悩みだ。(取材・昆梓紗)
そんな中で、保育園・小規模保育施設を運営するグローバルブリッジホールディングスの関連会社で、保育・介護におけるICT事業の企画・開発を行うソーシャルソリューションズ(東京都墨田区)は、連絡帳アプリ「CCS NOTE」と、写真・動画共有サービス「CCS MEMORU」を全国の保育園に無償提供することを決めた。登園自粛をしている園児と、保育士をつなぐことで、家庭保育を支援する。
登園自粛時でもつながりを
もともとCCS NOTEは保護者と保育園間での毎日の連絡帳に使用。日々の体調や欠席連絡、保育園での活動報告などを行えるアプリだ。また、CCS MEMORUは園での活動の動画と写真を保護者に有料で配信していた。これを登園自粛期間中の家庭保育支援に役立てることにした。
先行して試験導入している「あい・あい保育園 東池袋園」(東京都豊島区)では、CCS NOTEを活用し、登園自粛をしている家庭に対して「家庭や子どもの様子、悩みなどをコメントいただければ、園長や担任が返信します」といったメッセージを一斉に送信。すると子どもの様子や体調に関する報告や、保護者からの悩みなどが多数寄せられた。家庭によって頻度は異なるが、その後も保護者と保育園とのメッセージのやりとりが続いている。
保護者からは「登園自粛中でも先生とのコミュニケーションができるのは嬉しい」といった声があった。
また保育園側も、登園していない子どもの心身状態の把握や保護者のケアといったサポートにつなげることができる。同園の高山京子施設長は、「普段は子どもと離れている時間が長いので、この機会にたくさん触れ合えて良いという方もいれば、限られた環境の中で、長時間子どもと過ごすことが苦痛になってきている保護者もいると思う。ストレスを蓄積していき、虐待に繋がるケースもあり得る。アドバイスだけでなく、話を聞くことが大切だと考えている」と話す。
実際にメッセージのやりとりから発展し、電話でやりとりをしたという家庭もあったという。
登園自粛をしている家庭だけでなく、仕事の都合で登園させている保護者にとっても、メッセージのやりとりは役立っている。「この状況でも仕事に行かざるを得ない保護者の方々もストレスが蓄積しています。そういった方々の声を聞いてケアすることも重要だと実感しています」(高山施設長)。
配信を楽しみに
さらにCCS MEMORUを活用した動画配信も行っている。クラス担任の保育士が、0歳児から5歳児まで、それぞれの年齢に合わせて遊びやお話、歌の動画を配信している。「普段から親しんでいる先生が動画に登場するので、子どもも興味を持ち、配信を楽しみにしてくれているようです」(高山施設長)。
現在は遊びに関する動画だけだが、今後は保護者からの要望をもとに、調理師の食事に関する配信などバリエーションを増やしていく。また、生活リズムをつくるためにも、登園時間に合わせて配信するなどを考えている。
休園期間がより長引く場合には、就学前教育プログラムの配信も視野に入れていくという。
保育士の在宅勤務を可能に
このような保育園でのICTの活用は、保育士の在宅勤務に関しても役立っている。在宅勤務でメッセージのやりとりを行ったり、動画配信のための準備(※)をしたりといった勤務が可能になっているという。保育園に行き、園児がいなければ仕事ができない、という環境を変えることにもつながっている。
CCS MEMORUは2019年4月にリリースし、グローバルブリッジホールディングスの運営する全国73施設に導入されている。保育士1,000名超、保護者約3,000名(園児数)が利用している。CCS NOTEは2020年4月リリース、現在約20施設ほどに導入されており、体制面の調整ができた施設より、順次導入していく。
「通常時に運用しているシステムで有事の際にも繋がっていられるというメリットは大きい」(グローバルブリッジホールディングス広報)。両サービスとも、休園および登園自粛が解除された後も、保育園と家庭をつなぐシステムとして引き続き活用していくという。
(※)あい・あい保育園 東池袋園では現在、動画の撮影は園で行っている。