オンライン授業へ動く主要国立大、教育格差は生まれるか

大学教育に変化及ぼす

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全面的なオンライン授業への移行に踏み切った東大

新型コロナウイルス感染症対策の一環として、大学でオンライン授業の導入が進んでいる。文部科学省の調査によると、8割以上の大学や高専などで実施したり検討中という。全国の主要国立大学でもインターネットを活用した遠隔授業に積極的な姿勢を見せる。今後、高等教育機関の授業のあり方にも変化を及ぼしそうだ。

【東大】全面移行、感染防ぐ

東京大学は3月31日「4月以降に開講する授業は、当面の間、インターネットを活用した授業(オンライン授業など)のみで開講する」と決めた。全面的なオンライン授業への移行は、全国の大学の中でも情報化が進んでいる東大でも、初めての経験だ。

3月中旬の時点では「対面での講義は最小限とし、オンライン化を奨励し推進する」としていた。半月で大きく方針転換した理由は、春休み期間中に教員や学生の相当数が海外渡航していた実態が分かり、キャンパスが感染拡大の場になる危険性が高まったためだ。

新入生が教養教育を受ける駒場キャンパス(東京都目黒区)では、新入生の事務手続きを簡素化して4月6日に新学期を開始した。自宅からオンライン授業へ参加できる体制を整えた。また東大全体の教職員を対象としたオンライン授業講習会を随時開催し、多数の教員が参加している。各部局でも講習会を複数回実施した。学生だけでなく、交代制の在宅勤務やオンライン会議への取り組みも進んでいる。

【名大】学習支援ツール活用

名古屋大学は新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、9月までの前期の講義式授業を基本的にオンライン形式とした。実習や実験を伴うオンライン化が不可能な授業は対象外とし、参加人数や密集度に配慮して実施する。

オンライン授業は、教材配信やリポートなどの提出がインターネット経由でできる同校の既存の教育学習支援システム「ナゴヤ・ユニバーシティ・コラボレーション&コース・ツール(NUCT)」を活用する。配信内容は、文書や図、画像などの表示と音声を中心にして通信データ量を抑え、インターネット環境に恵まれない学生に配慮し、通信料の負担も軽減する。

1日に発足した東海国立大学機構により、経営統合相手の岐阜大学とはオンライン授業の体制整備を進める合意ができていた。新型コロナウイルスの感染拡大に合わせて前倒しでの実施を、情報系や授業方法を専門にする教員を中心に検討していた。

【九大】教員に合わせ対応

九州大学は2020年度の春学期の期間を5月7日―6月24日、夏学期を6月25日―8月12日にそれぞれ変更した。春学期の基幹教育科目については原則、遠隔授業とする予定。従来、教員によってはeラーニングなどでIT活用を進めてきたが今回の事態で一気に加速する。

具体的には、デジタル資料の活用、音声の同時配信、黒板を使った講義の映像中継などのメニューを教員に合わせて活用する方針。同大はオンライン授業に関する分かりやすいマニュアルを作成したほか担当部門で教員や学生の問い合わせに対応するなど円滑な授業実施に向けた支援が続いている。

【北大】教室でWi―Fi利用

現時点で1学期・教育科目の授業開始を5月11日に設定したのは北海道大学。ただし、この通りに進むかどうかは微妙。5月11日以降「可能な限り教室などで行う対面授業を控える」として全面的なオンライン授業の導入をすでに決めている。実験や実習などについては「室内の換気を十分に行い、学生間での一定の距離を確保、感染予防策を実施した上で実施する場合もある」と学生に伝えている。

オンライン授業は「スマートフォン利用でも可能」とはしているが、画面が小さく「授業の受信には適さないのでパソコンの準備をしてほしい」とし、授業を受ける際には「Wi―Fiなどの高速インターネット環境が必要」と指摘している。自宅で受信環境が整わない学生に対しては同大高等教育推進機構内にある各教室のWi―Fiを利用できるように準備している。

【東北大】来月から本格実施

4月の新入生向け各種オリエンテーションと当面の授業はオンラインで実施する。東北大学の全学教育科目は、4月20日から5月6日の期間をオンライン授業試行・習熟期間とし、5月7日から本格的なオンライン授業を実施する。大学のホームページを通じて、遠隔授業で使用するツールの接続確認などを行うガイドを掲載している。

【東工大】生配信で在宅受講

20年度の学事始まりは4月20日、授業開始は5月4日。東京工業大学ではその間の期間は授業受講の準備に充てる。主にウェブ会議システム「Zoom」のアプリケーション(応用ソフト)を使った遠隔配信で、実施する。

学生は時間割を確認し、その時間帯にオンライン授業がライブ配信されるのを原則、自宅で受講する。同大の教育革新センターのホームページで、受講方法やオンライン授業実施の注意点などを案内し、サポートしている。

【京大】窓口で遠隔相談

京都大学は、4月1日付で全ての授業を5月6日まで休講とすると決定した。3月26日付の告知では、科目によって通常の対面授業からオンラインなどに方法を変更し、対面授業の場合は空席を設けるなどしながら、4月8日から授業を開始する予定だった。京都市内での集団感染拡大が懸念されることを受け、5月までの休講が適切と判断した。さらに5月6日以降も「対面授業は原則停止し、オンライン授業を中心に行う」方針とした。

学生に対してはホームページでの告知のほか、学生用ポータルサイトやツイッター、学生向け広報誌などで最新の情報や注意事項を発信していく。学部・研究科によっては担任制を取っており、オンライン授業開講前の履修指導をウェブ会議システム「Zoom」で行うなど支援を進めている。

全学の相談窓口の学生総合支援センターカウンセリングルームでも電話やウェブ通話、電子メールで遠隔相談を受けている。オンライン授業の準備を進める教員へも、ホームページからの質問を受け付けるなどフォローをしている。

【阪大】実践ガイドを作成

大阪大学は学内の活動制限で、授業について5段階で2番目に厳しいレベル4としている。30日までを「特別配慮期間」とし、「授業支援システム(CLE)」などを使ったオンライン授業のみを行う。授業開始は9日だったが、全学共通科目や1年生の専門科目、教職教育課程は20日に開始した。5月の連休明け以降の対応は30日までに社会情勢などを踏まえて通知する。

インターネットに接続できる学内アクセスポイントは感染拡大防止のため閉鎖。学生には自宅のインターネット環境を整えるよう呼び掛けてきたが、受講が困難な学生には後日教育的配慮を行うとしている。

教員向けには全学教育推進機構教育学習支援部が「オンライン授業実践ガイド」をまとめた。CLEによる資料や音声、スライドの配布方法や課題の出し方を紹介している。動画の撮影やアップロードの方法も扱っているが、学生の通信環境を課題に挙げる。動画配信時は受講生の通信環境の確認を促し、4月中は通信量の負担が少ない資料や音声、スライドによる授業を行うよう提案している。

日刊工業新聞2020年4月22日

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