休暇、資格、残業ゼロ。若者が働き続けたくなる職場環境とは?
三元ラセン管工業(大阪市城東区、味岡友和社長、06・6968・2037)は、社業を担う人材確保のため“若者が働きたくなる職場づくり”を実践している。他社に先駆けて週休2日制を1996年に導入。年間120日以上の休暇付与と徹底した作業効率化で残業ゼロを実現している。一方で、社員に資格取得も促し、多能工化を推進。「総合的なモノづくり力の向上で顧客満足度を高めている」(高嶋博会長)と強調する。(大阪・由賀徹)
三元ラセン管工業はフレキシブルチューブや伸縮管継ぎ手(ベローズ)といった金属パイプ部材の設計・製造を手がけている。価格競争を避けるため量産せず、単品や小ロットに特化した受注生産で多様な高付加価値製品を提供している。
特にベローズ製品は振動や高温、高圧に耐える材質や構造研究を重ねて企業や大学、各研究機関から高い評価を獲得。主にインターネットや展示会で製品特性や技術力をアピールし、ネット販売で顧客層を広げている。
少人数の技術社員で構成される町工場にとっての課題は将来の柱となる若手人材の確保・育成だ。同社はハローワークを通じて補充人材を募集する一方、入社後の「若者が誇りを持って働き続けられる職場環境づくりにまい進してきた」(高嶋会長)としている。
例えば、週休2日制の実践や休暇取得の徹底管理など、中小企業として先駆的な労働条件の改善を実現してきた。さらに無理な受注を避けることで社員に残業を求めず納期を順守する独自の生産モデルを確立している。
社員の育成に関しては品質管理の国際規格「ISO9001」の認証取得が大きな転機となった。「21世紀には町工場にも品質保証が必要になる」(同)と決断。社員が認証取得に向けて業務効率化や作業工程の改善に取り組んだ。約3年間かかったが2000年に認証を取得。「社員のモチベーション向上に大きく寄与した」(同)と振り返る。
社員のやる気を引き出すため資格取得を奨励し、少人数での多能工化を目指してきた。その結果、作業効率が向上して休暇を取りやすい職場環境を生み出した。さらに同社は社員が取得した資格を公表して評価するなど、自己研さんの機運を醸成している。
社員教育や育成法が評価され、国内外から研修生の実習依頼も相次いでいる。19年度には日本国籍を取得したインドネシア人が転職してきた。前職より労働環境が改善されたこともあり、ベテラン溶接工としての実力を発揮している。
同社では清掃業務に長年従事していた主婦がキャリアアップ教育を経て正社員として活躍中だ。今では1人でフレキシブルチューブの製造を担当する。高嶋会長は「決して特別なことをしたわけではない。当初に目指した『若い子たちが満足し長年働ける会社づくり』が現在の働き方改革につながっている」と明かす。今後も多様な人材が活躍できる取り組みを進めていく。