専門性・成果主義に重点…生保に人事制度改定の嵐
2020年度に複数の生命保険会社が大規模な人事制度改定を実施する。いずれも学生から人気の高い企業であり、人手不足に端を発する改定とは性質が異なる。確定的な先行き予測が厳しさを増す時代、個の力の強化や多様化で環境変化を乗り越える
第一生命保険は社員一人ひとりの行動変容や個性の尊重を軸とした人事制度に移行する。具体的には職責グレードを複線化し、知見や経験に秀でた社員を十分に処遇できる体制にする。稲垣精二社長は「従来はマネジメントにキャリアパスの重きが置かれていた節があったが、キャリアプランやライフデザインは多様になっている」として、専門分野を高度に磨けるキャリア形成の道を用意した。
明治安田生命保険と太陽生命保険の両社は4月に改定予定。共通点は、年功序列という日本の伝統的人事制度の色彩を薄くした成果主義への移行。明治安田生命は年収に占める役職と成果のウエートを約60%から約75%に引き上げる。若手や定年延長した60―65歳のシニア層でも役職や成果次第で高い処遇を実現可能。6月から企業内大学も開講予定で、成長意欲の高い社員が能力を高められるインフラ面も拡充する。
太陽生命も成果や職位に応じた変動給を拡大する給与テーブルとする。若手の積極的登用を進め、本社勤務の場合、早ければ従来より2年程度早い10年目から管理職に登用する。現在も高い人材の質を確保できる内定倍率だが、総合職の初任給は業界最高水準の25万円に引き上げる。
こうした制度への移行は顕著だ。日本生命保険も19年度に職務成果をより処遇に反映できる体系としたほか、入社後5年間をビジネスプロフェッショナルに必要な基礎を形成する「初期育成期間」に設定。ITや財務知識など各種研修を通じて若手の早期のキャリア形成に注力している。
住友生命保険は、19年度の人事評価から成果と投入した時間のバランスに着目する「生産性評価」の基準を導入。発揮したパフォーマンスが同じ場合、効率良く働いている社員を高く評価する。「一連の働き方改革の成果を含め、19年4月から20年1月までの総労働時間は16年度同月比で11・7%減っている」(同社)と明かす。
低金利環境が継続する一方、事業との融合が不可欠なデジタル技術は日進月歩で進化する。不確実性な時代に将来像を見通すことは難しいが、“個の力”に厚みを持たせる仕組みで組織全体の競争力向上につなげていく。