【新型コロナ】政府は明確な指針出して…工事継続に迷うゼネコン
新型コロナウイルス感染症の影響が建設業界にも広がってきた。西松建設に続き清水建設が13日、緊急事態宣言が発令された7都府県の約500の建設現場の発注者に対し、原則工事中止の申し入れを始めた。都内の現場で働いていた3人が感染し、うち1人が死亡したことを受けた緊急措置だ。だが、発注者の意向が強い建設業界で、この動きが広がるかは不明だ。また工事が止まると雇用の影響が懸念される。業界はどのようなケースで工事を中断し、その際の雇用保障がどうなるのか、政府に明確な指針を求めている。
【国交省が通知】
国土交通省は3月19日、地方自治体の入札責任者にある文書を通知した。学校の臨時休業などで人材が確保できないなど、さまざまな理由で工事が継続ができない場合「受注者の責によらない事由によるものとして、適切に対処される」とした。工期延長に伴うコスト増加分は発注側負担を明確にした。
同日、国交省は経団連など35の民間発注団体にも、自治体へ通知した内容を参考に伝え、コロナ感染症の影響は「不可抗力」とするよう求めた。具体的には「受注者から工期延長を請求でき、それに伴う増加費用は発注者と受注者の協議で決めること」を発注者側に求めた。
さらに建設業界団体には元請け、下請け間の取引の適正化に努めるよう通知した。工事の延期などの場合の工期や請負代金の設定とともに、元請けが部分払い(出来高払い)を受けた場合には下請けにも適正に支払うよう求めた。
【力関係で決まる】
ただ、民間の工事契約では、たとえ不可抗力で工期が延長しても現実には発注者の方が立場は強く、力関係でコスト負担が決まることが多い。さらに元請けから下請け、下請けから孫請けへと行くにつれ立場は弱くなり、最後は日雇いの作業員にしわ寄せがいく。
工事の現場からは日増しに感染拡大への不安が高まっているという。ただ日雇いが多い現場作業員は、生活のために休めない事情もある。赤羽一嘉国交相は14日の閣議後会見で「工事の一時中止に伴い、経営基盤が脆弱な下請けにしわ寄せが行かないように対応することが必要。元請けと下請けの取引の適正化について、より一層徹底するよう求める」と発言した。
7日に閣議決定された緊急経済対策では、雇用調整助成金の拡充や1人親方を含む個人事業主も対象とした給付金制度の創設、納税猶予の特例などが盛り込まれた。国はこれらを建設関連事業者に周知徹底し、支援措置が十分活用され雇用が維持されるよう取り組む。
【消極的な姿勢】
ただ、民間工事では工事中断などに伴うコスト増を誰が負うのかという明確な目安がない限り、受注者から工事の一時中止を言い出すのは難しい。ある大手ゼネコンは「作業員の安全性を確保した上で、原則工事は継続する」。別の大手も「発注者からの要請を受けたら個別に協議する」方針だ。工事中止によるコスト負担増や完工の遅れなどを嫌い、消極的な姿勢が目立つ。国や自治体による休業要請と補償を明確にしてほしいのが本音だ。
発注者などへの中止要請、コスト負担分の協議の目安の策定、さらに日雇いが多い作業員への生活支援など、政府や自治体の支援が不可欠になっている。ある準大手ゼネコンは「流れさえできれば大手の動向に同調できるのだが」としている。