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ゼネコン20社、AI配筋検査システム共同開発の事情

ゼネコン20社、AI配筋検査システム共同開発の事情

写真はイメージ

準大手・中堅ゼネコン20社が配筋検査システムの共同開発に乗り出した。人工知能(AI)を配筋のチェックと検査に応用し、配筋検査の半自動化を目指す。完成後は現行比約60%の効率向上を見込み、将来は外販を視野に入れる。20社は受注でしのぎを削るが、将来の熟練技能者減少など建設業の共通課題解消へ協力する。開発期間を短縮して現場へ普及を促し、同業他社間で重複する技術開発「2重開発」のムダ回避を狙う。

20社は9日、AIと画像解析を活用した配筋検査システムの共同研究開発契約を結び、2019年4月から研究開発を始めたと公表した。期間は約2年。五つのワーキンググループ(WG)で研究開発を推進している。

タブレット端末に対応した配筋チェック機能と、特許出願中の特殊カメラを使った配筋検査機能の二つの機能を開発し、最終的に両機能を統合したシステム開発を目標に掲げる。20年度に配筋チェック機能を各社の現場で試行する予定。

両機能に必要な設計データはAIエンジンを使いデータベース(DB)化。配筋チェック機能はディープラーニング(深層学習)と画像処理を活用し、撮影した配筋写真から配筋の径や本数、ピッチなどを算出する。

配筋検査機能は配筋映像を撮影して3次元(3D)的に配筋形状を自動計測する。計測データは検査項目に合わせて変換・照合し、配筋検査の帳票に自動入力して配筋検査の半自動化を実現する。

建設業は担い手不足をはじめ、24年4月に時間外労働の罰則付き上限規制(残業規制)が始まる予定で、現場の生産性向上が急務だ。各社は関連技術を開発中だが、複数社が同じ技術を開発する2重開発のムダが課題に浮上。大手5社の鹿島竹中工務店はロボット施工分野などで技術連携を始めた。今回の共同開発はこうした“競争と協調”の流れだ。

一般に共同開発は「参加企業が多いと意見集約が難しく逆効果」(業界関係者)。だがAI時代の開発はビッグデータ(大量データ)が欠かせない。深層学習に必要な現場や試行時の膨大なデータも、20社なら素早く集めて開発速度が高まる。

配筋検査システムの開発で先行する大手各社に対し、準大手・中堅20社が存在感を見せられるか。今回の共同開発が試金石となる。

日刊工業新聞2020年3月10日

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